講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


4. DIYerからコミュニティ大工へ
佐藤:  言わばグリーンツーリズムのために自宅のDIY改修に取り組んだわけですが、現在はコミュニティ大工として改修の現場にいくつも携わられています。これらの間には大きなジャンプがあるように思います。何かきっかけがあったのでしょうか?
有木:  今となってみれば、2021年にコミュニティ大工の下地ができていったように思います。と言うのは、この建物の改修に取り組みながら、加藤さんの声がけで熊本県の水害復旧の現場にも関わらせて頂いたんです。そこでも、ワークショップスタイルで改修作業を進めていて、参加者の中には70代のおばあちゃんもいらっしゃいました。おばあちゃんは、加藤さんに教えてもらう前は何もできなかったのに、驚くことに2時間後には「はいもう任せて」と言ってスライド丸ノコを使いこなしている。その他にも鹿児島県内の様々な現場に連れて行ってもらいながら、DIY作業そのものとその教え方を同時に学ばせてもらいました。
現場では、加藤さんにはできるけれど自分にはできないことが沢山あります。道具の使い方は全般的に及びませんし、コミュニケーション能力も加藤さんには及ばない。でも誰を巻き込めば良い雰囲気にできるとか、分からなかったら誰に相談すれば良いのかとか、見えるようになってきました。ですから自分独りでできることは決して多くありませんが、南大隅町でのコーディネートはできていると思います。
鈴木:  それはすごい強みですよ。だから有木さんへの相談が来ているわけですね。
有木:  家づくりは別世界のことだと思っていましたが、どの現場でも自分にできる作業で家づくりに関われるという嬉しさがあります。それに、一緒に汗を流した人たちと同じ釜の飯を食べて言葉を交わす時間はとても楽しいんです。この数年間、コミュニティ大工の古民家改修に携わってきましたが、こうした取り組みを通して地域がパワーアップするように感じています。建物が生まれ変わるだけではなくて、参加者自身が成長するし、改修作業に集まった人たちの繋がりが広がっていく。私だけじゃなくて、参加された皆さんがそう感じていると思うんです。私の場合は自分が使っている建物の改修から始まりましたが、そこからまた別の現場が生まれて仲間たちのスキルも上がっていく。改修が済めば、その場所でできることも増えていく。そして地域でできることが少しずつ増えていく。そうしたことを皆さんが実感されていると思います。
松村:  有木さんのお話からはコミュニティ大工の楽しさが伝わってきます。
有木:  コミュニティ大工の現場には、色々な楽しさが詰め込まれていると思います。自分自身が成長する楽しさ、交流して世界が広がっていく楽しさ、誰かの力になっているという楽しさ、そして夢が広がっていく楽しさなどが詰め込まれている。真剣に作業に集中していると自分の世界に入りがちですが、怖い顔をしていたら話しかけづらくなっちゃう。限られた作業時間を有効に使う必要はありますが、今日皆さんに説明していて、やっぱり楽しいという気持ちを忘れちゃだめだなと思いました。




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