講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


3. 海と山と町、どこに住みたいか?
有木:  都市と農村をつなぐ活動を南大隅町の皆さんと一緒にしたいという気持ちが高まっていったところで、地域おこし協力隊の募集があったんです。
鈴木:  この建物に住むことが、移住前の飲み会で決まったんですよね。なんでも長老との会話がきっかけだったとか。
有木:  こちらに写っているのがその長老です。「海と山と町、どこに住みたいか?」と聞かれたので、「山に住みたいです!」と答えたら築70年の一軒家を紹介されました。空き家になってまだ2年でした。
松村:  しかも牛舎付きだった!
有木:  牛舎だったのは20年前のことで、土間のまま倉庫になっていました。その裏には子供たちの勉強部屋に使っていた倉庫もありましたが、こちらは今にも崩れそうな状態だったので地域の人たちの協力で解体しました。ここは栗之脇地域の中心で、昔はお店だったそうです。地域の皆さんがよく通る場所にあるので「明かりが灯って嬉しい」と言って下さいます。
鈴木:  通常、地域おこし協力隊はどういったところに住むんですか?
有木:  協力隊の先輩方が住んでいたのは、役場が指定した町営住宅です。でも中心地に住むと地域との関わり方が変わってきますし、地域によって移住者の受け入れ具合も違います。地域に溶け込みながら活動したいという希望を伝えていたので、先程のような投げかけをして下さって、その隣にいた親父さんが「それだったらうちの地域にうってつけの空き家があるよ」と言って下さいました。実はその飲み会には、海の親父さんや町の親父さんなど、色々な地域の親父さんも揃っていたんですよ(一同爆笑)。
松村:  受け入れ候補地の世話役のような方々が揃っていたわけですね。
有木:  地域おこし協力隊として南大隅町に移住してからは、この建物に住みながらNPO法人風と土の学び舎の活動に加わりました。すると「民泊を受け入れる家が足りないから泊めてくれないか」という相談があって、私も学生の受け入れをするようになります。住み始めてから、「行ってみたいけど泊まれる場所はありますか」といった問い合わせもちょくちょく来ていたので、それだったらこの建物を宿にして地域の交流場所にできないかと考えるようになりました。加藤さんにお願いして「栗のや、」のオープンに向けて動き出したのが2021年2月です。私の部屋を母屋から移す必要があるので、元牛舎にあった家財を処分し、梁を入れ替えたり屋根を直したりしました。加藤さんに来て頂く前の一ヶ月間ほど、地元のピーマン農家さんに手伝ってもらえたのは本当に助かりました。ちょうど農閑期だったんです。マイナスの状態だった物件の基盤を整えていただきました。




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