講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


8. 青年海外協力隊のノウハウを活かしたエリアマネジメントの展開
奥村:  最後に2015年から輪島で始めた「輪島KABULET(カブーレ)」というプロジェクトを紹介したいと思います。日本版CCRCとの関連でいえば、こちらはタウン型の展開になります。
バブル景気の時、輪島塗は工芸品ばかり作るようになって失敗しました。輪島KABULETでは、輪島塗を使った家やカフェを街なかに作りながら、漆の日常使いを街ぐるみで実践していきます。もちろん、空き家の活用も狙いの一つです。輪島では、ナンバーを取ったゴルフ場のカートが街なかを走っています。今のところ観光客向けの取り組みですが、輪島塗のカートを作って生活の足として利用することも考えています。例えば、サ高住に輪島塗カートを配備して、住民が世話人さんの運転で病院や買い物に行くといった使い方です。こうした諸々の輪島塗をKABULETとして認証していこうと考えています。
鈴木:  すごい企画力ですね。社会福祉法人の事業範囲をはるかに越えている印象ですが、輪島KABULETは佛子園が提案されたんですか?
奥村:  輪島市から声をかけて頂きました。以前から街おこしを計画していたところ、コンサルタントが外国人観光客のことばかり言っていて、どうも話が広がらないと感じていたそうです。そういう時にシェア金沢を見学され、「シェア輪島をやってくれませんか」とお誘い頂きました。
企画づくりには、シェア金沢でも協力してもらった企画会社と取り組んでいます。福祉関連には私どもの経験を生かせますが、これだけの取り組みになると様々な人材が必要です。問題は集め方です。例えば、地域おこし協力隊といった制度を見ていると、マッチングの仕組みが足りないように思います。輪島KABULETでは「○○のスキルがある人に来て欲しい」とハッキリ打ち出して、徹底的にマッチングしていきます。具体的には、青年海外協力協会と連携して帰国隊員を集めます。青年海外協力隊員は毎年800人ほどが日本に帰ってきますが、様々な業種の人達がいます。KABULETのニーズとマッチングして、まず20人が輪島に移住してまいります。
松村:  青年海外協力隊員は帰国後に相応しい活躍の場を見出すことがなかなか大変だと聞いています。
奥村:  派遣先では、隊員が自分で考えて一連の活動を行う必要があります。何が必要とされているか現地で把握し、計画を立案して実行に移し、その評価を行っていく。そのため、青年海外協力隊員はPCM(Project Cycle Management)という手法を学びます。雄谷理事長も青年海外協力隊員OBですが、研修で徹底的にPCMを叩き込まれたそうです。佛子園の職員もこの手法に基づいて施設づくりを進めています。青年海外協力隊員はすごく逞しいのですが、帰国後の計画をせずに情熱で海外に行く人が多い。そうしたノウハウを持った人材が、帰国してからは青年「国内」協力隊として地域づくりに携われるようになったらすばらしいと思っています。

《輪島KABULET の計画マップ》
出典:http://wajima-kabulet.jp/life/



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