講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


5. 高齢者に優しい都市づくりの方法に学ぶ
奥村:  シェア金沢では、佛子園として初めてサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)に取り組みました。改めて高齢者関係の勉強をしたところ、自分たちが頑張るだけでは不十分だということに気付かされました。三草二木西圓寺が野田町69世帯のコミュニティ・センターになったように、シェア金沢を田上町・若松町に根付かせることが担当職員に課されたミッションです。ボランティアでも趣味でも生涯学習でも何でもいいのですが、地域活動への参加率が高いと要介護認定率が低いというデータがあります。これが本当なら取り組むべき内容は単純です。シェア金沢の居住者はもちろんのこと、周囲の田上町や若松町の方々が参加したいと思う活動を、これでもかこれでもかと積み重ねていけばいい。私どもの活動を一生懸命頑張ることによって、田上町や若松町も元気になっていくわけです。
ところがWHOによれば、「住宅」「社会参加」「尊厳と社会的包摂」「市民参加と雇用」「コミュニケーションと情報」「地域支援と保健サービス」「屋外スペースと建物」「交通機関」という八つの要素が揃わないと高齢者に優しい都市にならない。佛子園が独力でできるのは「住宅」と「地域支援と保健サービス」くらいで、残り六つは自分たちだけではできません。高齢者は孤立しがちなので、細かな地域情報などを伝えるシステムが必要です。シェア金沢の本館は情報センターの役割を果たしています。その機能を高めるために共同売店などを設けようとすると自分たちだけではできないんですね。
そこで頭を切り換えまして、様々な仲間を募っていくことにしました。少なくとも一つは居住者や近隣のための活動に取り組むことが、シェア金沢の住居や店舗に入居する条件になっています。取り組みの内容はそれぞれが考えて、自分たちの得意技でしてもらう。例えば、学生住宅の家賃は相場の半額ですが、学生にはボランティアを担当してもらっています。

《シェア金沢のアトリエ付き学生住宅:トレーラーハウスが居住部分。》



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