講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


4. 『パタン・ランゲージ』を活かしたシェア金沢
奥村:  「シェア金沢」は、三草二木西圓寺がプロトタイプになった事業です。敷地規模は1万1千坪ほどになります。国立病院の跡地で、かつては結核患者の療養施設がありました。この広い場所に障害者と健常者と若者と高齢者が分け隔てなく暮らし、さらに地域の方々が関わりを持てるような街を目指しました。
安倍内閣に設置された「まち・ひと・しごと創生本部」は日本版CCRC(生涯活躍のまち:Continuing Care Retirement Community)を施設型、エリア型、タウン型の三つに分類しています。佛子園の事業に当てはめると、三草二木西圓寺が施設型でシェア金沢がエリア型になるかと思います。
鈴木:  建物の規模や外観が違うからでしょうか、三草二木西圓寺がシェア金沢のプロトタイプになっているとは、ちょっと気付かないですよね。
奥村:  シェア金沢は街づくりとして取り上げられることが多いからかもしれません。実際「シェア金沢は日本版CCRCを頑張っているね」と言われたりしますが、面映ゆい部分があります。CCRCは高齢者ケアを重視しています。一方、私どもが中心に考えてきたのは、どうしたら障害者を地域の方々に受け入れてもらえるかということです。極端に言えばシェア金沢では、高齢者は障害者をお世話する側です。いわゆる高齢者ケアは高齢者デイサービスと訪問介護だけで、あとは障害児の住む場所だったり放課後サービスだったり、地域から通ってくる障害者の仕事場だったりします。
雄谷理事長からは、シェア金沢に関わる職員全員に対して「クリストファー・アレグザンダーの『パタン・ランゲージ』を頭に叩き込んで、設計会社との打合せに臨め」という指示が出たんですよ。そのため打合せの時には、私どもが「道が真っ直ぐだと街はつまらなくなりますよね」とか、「やはり街を見下ろす場所が大切ですよね」などと妙な発言を連発するので、設計会社は訝しがっていました(笑い)。
数回目に種明かししまして、その後は職員と設計会社がパタン・ランゲージの考え方を踏まえて計画を進めていきました。建物の間を縫うように設けられた歩道はその表れです。アルパカを見に行く子供たちにも、ドッグランに行く人にも、料理教室に行くお母さんにも、ライブハウスに行く若者たちにも歩道を歩いてもらう。その途中で障害児たちの様子を見てもらい、障害児福祉に対する理解を深めて頂ければと考えています。

《シェア金沢案内図》
出典:http://share-kanazawa.com/townnavi/index.html



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