講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


6.果たすべき町の役割
松村:  移住者や空き家オーナーは、町に対してどのような役割を求めているのでしょうか。
西岡:  信用に関する保険のようなものじゃないでしょうか。移住者から見れば、仲介料などの透明性が期待できますし、町を信用して貸すと思えば、オーナーさんの心理的なハードルも低くなります。もっとも、問題が発生した場合は大変です。本来なら契約の当事者同士で解決すべきことでも、町に連絡がきたりします。
松村:  そうした取り組みによって、紀美野町にはどのような効果がもたらされましたか。例えば、徳島県神山町には20代や30代の移住者が集まり始め、結果的に子供が増えて人口構成のいびつさが緩和されています。
西岡:  移住の前段階で生活体験に来られる方もいます。そうした方々を含めて人の流動性が高まり、元々の住民にとっても生活の刺激になっていることは間違いないと思います。例えば、最近は「農家民泊」という形で修学旅行生を受け入れています。宿泊した家には、地域の子供たちも遊びに来たりしますから、高齢者だけの普段の生活とは賑やかさが全く違います。もちろん受け入れ側は大変ですが、心が満たされる方が多いようで、修学旅行生を繰り返し受け入れている住民もいます。
旧美里町時代のことですが、美里中学校が情報通信の指定校になってパソコンが導入されました。当時としては先進的な試みで、そこで学んだ生徒たちが東京でゲーム制作をしたりマイクロソフトの認定指導員になったりと、今では様々なIT関連の職に就いています。ですから、長い目で見ると教育が非常に大切だと感じています。農家民泊などをきっかけとして田舎暮らしの魅力を知ってもらい、故郷を大事にする気持ちの種をまくことが人口対策にもなっていくのではないかと思っています。

移住者の住まいの例「工房アレン’s」:旧保育園を住居兼工房として利用している。取材当日は奥様に案内して頂いた。



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