講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


11.リフォームの鍵を握る事前調査業務
三澤(文):  最近でこそリフォームが話題になっていますが、Msの設立当初からリフォームは多かったですね。ニュータウン内からの戸建リフォーム注文も結構あって、当時は2000〜3000万円というリフォームが最も多かった。最近は600〜700万円くらいが主流ですね。でも、松村さんが建築雑誌で書かれていましたけど、リフォーム市場はそれほど拡がっていないようですね。
松村:  建築確認が不要なので統計が実態を表しているとは言えませんが、国土交通省が出しているデータでは、今より1991年頃の方が多かったくらいです。少しは上がり下がりがありますが、増えていない。リフォーム市場への不信感が根付いてしまったことが大きな原因じゃないかと思います。技術的裏づけのない業者がトラブルを頻発してしまった。
三澤(文):  年に数件はリフォームを手がけてきましたが、新築より難しさを感じることがあります。新築物件は住まいメモから始まる手順が確立していますが、リフォームは業務をなかなか定型化できない。それをまとめている最中ですが、分かってきたことは、事前調査にポイントがあるということです。

消費者からのクレームもありますが、実はその逆もある。後からシロアリが出たとか言ってきて、代金を出さない発注者もいます。そういう支払いトラブルを含めて、様々な面でリスクが大きくなりますから事前調査がとても重要になります。
三澤(康):  建築年月日を始めとする書類チェックはもちろんのこと、大工さんと床下や小屋裏にももぐります。壁量が現在の建築基準法の何割あるかなど、隅々まで調べます。そこまでやって、あなたの住んでいる家はこういう状態ですと伝えられる。そのときに言っていることですが、病院に行って目視だけで薬が処方されることはあり得ませんよね。レントゲンを撮ったり血液検査をしてから病状が診断される。治療方法を決めるのはその後です。家のリフォームも同じことです。
松村:  そうすると新築のように最新技術だけ分かっていれば済むというわけにはいかないですね。技術の変遷なども分かっていないとできない。
三澤(文):  実を言うと、30歳代の頃はリフォームに苦手意識があったんです。40歳代になって何でも来いという気持ちになれましたが、リフォームでは既に実物があってそれをどうするのか、その場での即断が求められたりしますから。
三澤(康):  住み手もその家をどうしたらいいのか、戸惑いながら相談に来ていることが多い。私たちのような専門家の意見を聞きながら、家族の今後の住み方が同時進行で決められていく。私たちの役割は非常に大事なんです。
三澤(文):  新築では住まいメモを書いてもらいますが、リフォームのお施主さんの多くはこのような状態ですから、なかなか分析的には書いてもらえないわけですよ。ですから、リフォームではヒアリングシートにしました。手間はかかりますが、出来上がった後のお施主さんの喜び方はリフォームの方が大きいように感じます。

[インタビュー:2003年12月、Ms事務所にて]



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