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鈴木: |
今回は京都の都市型ライフスタイルを取り上げるということで、装束店の丸橋さんにインタビューをお願いしました。最初に装束店という仕事について教えてください。
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丸橋: |
うちの生業は、神社に何でも用意して納める仕事です。神主さんが着る物や持ち物はもちろん、まわりの調度品から神輿まで、神社から頼まれた物は何でもです。もちろん、ある程度の品物は専門の方が製作しているんですけど。
それと、私たちもお出入りの神社があります。例えば、○○神社のお祭りの時には出向いて行って、神主さんがお召しになる装束を私達が着せて送り出す。こういった仕事が担保となって、今のような形で同じお得意先で仕事が続けられるということです。
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松村: |
建築世界の言葉で言うと、一式請負のような形ですね。
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丸橋: |
どちらかといえば、商社に近いかもしれません。うちの場合は、自店製作が多いのですが、同じ装束店を名乗っていても得意分野や苦手分野があったりして、様々な種類があります。
京都の伝統産業で作られている品物についてはほとんど知っているつもりです。一般の方には価値の判断がつかないような物でも、私たちは一つ一つの部品を見ていけばあるていど分かります。ですから、専門でない方は、信用できるよく知っている方に聞くのが一番だと思います。京都では作り手にもそういう専門意識があるので、まだ、ぎりぎり品質が守られているんだと思います。
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松村: |
装束店というと、神社さんに納める店のことを指すのですか?
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丸橋: |
全国に二万五千人くらいの神主さんがいて、その人たちの着る物などを作るんです。神社が全国に八万軒くらいあって、そのうち稼動しているのは、2500社あるかないかです。いつも神主さんがいる神社って、人口の少ない地域では非常に少ないんですね。
それを、京都なら20社、東京なら7〜8社、あとは甲府、名古屋など、多く見積もっても40社くらいの装束店で供給しているわけです。
そのため、どうしても通販が多くなります。当然、カタログが発生します。すると、値段の競争が起こります。A社とB社の品物をお客さんは写真を見て比較しますが、品質の違いは分かりませんから安い方を選びますよね。そうなってくると、品質の良い物を作っている店はあまり売れなくなってしまいます。
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