講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


4.田園住宅の特徴
松村:  田園住宅を建てた場所は、もともとはどういったエリアですか。
西田:  それと、インフラはどのような状況ですか?
辻野:  用途地域は無指定です。周辺は米、麦、豆、切り花といった農業用地として使われています。土地は私どもが取得して分譲していますが、優良田園住宅促進法の規制緩和を活用して農地転用もしています。

水道が来てないところは井戸を掘るか当社で本管を敷設しています。下水は合併浄化槽、ガスはプロパンです。電気は、既に通っている敷地から建てることで、インフラ整備の負担を軽くするようにしています。
松村:  設計の仕組みはどうなっていますか?全て同じ設計者が設計するとか、何か基本的プランとかがあったりするんですか。
辻野:  設計者は特に決まっていません。外部の設計者を紹介する場合もあるし、居住希望者自身が連れてくる場合もあります。また、次の計画では設計者2名にコンペ形式で提案してもらい、居住希望者に選んで頂こうと思っています。

住宅の基本形はシルバー屋根の切妻です。外壁は特に決めていませんが、ガルバリウム鋼板か木かレンガになっていますね。
鈴木:  建設費はどの程度になりますか?
辻野:  土地代を入れて、3200万円ほどでしょうか。土地は600坪程度、家は40〜50坪くらいです。
松村:  充分な広さですね。お子さんを連れてくるなど、ご家族で移住される方も多いのですか?
辻野:  最近は若い方も多くて、熟年世代と若い世代が半分ずつくらいになっています。
鈴木:  現在までに建った10棟は、隣接しているんですか?
辻野:  バラバラですね。1期が5棟、2期が1棟、3期は2棟が完成していて現在2棟を建設中です。4期と5期が1軒ずつで、次に募集する場所が6期6区画になります。
鈴木:  近接してみんなで住む、というものではないんですね。居住者全員が集まることはあるんですか?
辻野:  ありますよ。住人集会や忘年会などの宴会には、予定がなければ集まりますね。
西田:  やはり、最初の5軒の居住者がそういった共同性のコアになっているんですか。
辻野:  そうでもないですね。居住者のパーソナリティに関係しているんじゃないでしょうか。もっとも、みなさんがこうした集まりを大切に思っていらっしゃることは確かなようです。今年の夏に今後のプロジェクトに向けて住民の方とワークショップをしたところ、「田園住宅の暮らしの中で大切にしたいものは?」という質問では、「人間関係」という回答が圧倒的に多かったですから。
鈴木:  そういった共同性はどのようにして生まれてきたのでしょうか。最近は、他所と関わらないで住みたいという風潮が強く、共同性というのはあまり流行らない感じがありますが…。
辻野:  やはり、移住して来ると一人では心細いですから。実際、暮らし始めると、分からないことも色々と出てきます。例えば、ストーブ用の薪をどこで買ったらよいのかとか。私どもの方で車を手配し、住人の皆さんがまとめて仕入れて配ったこともあります。
鈴木:  集まることに意味がある。生活上の必要があるんですね。
松村:  やはり、それがないと駄目ですね。共同性というのは。
辻野:  物理的な共有施設としては会館が近くにありますが、これはもともと地域にあったものです。田園住宅の居住者専用の共同アトリエが欲しいと言われているのですが、そこまでウチの会社でというのは、ちょっと…(苦笑)。
松村:  通常の建売住宅は、売れてしまえば売主と買主はそれっきりですが、お話を伺っていると、辻野さんのところはそういった感じではないようですね。
辻野:  ここではそうはいきませんね。もう、一生付き合っていかないといけない。
西田:  ライフワークですね。(笑い)



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