Report 郊外住宅地の持続と再生

人口減少/少子高齢社会における
イノベーティブな次世代まちづくり

東京大学まちづくり研究室 教授 小泉秀樹
 これからの郊外住宅団地はイノベーションと結びつき、郊外こそがイノベーティブになると考えています。そして上郷ネオポリス (横浜市栄区) での調査を通して、郊外住宅地の場合は、敷地割の多様性により、異なる住宅タイプや住宅機能・性能が適切な形でミックスされていることが、多様な居住者をひきつけるポイントと考えております。コミュニティを起点として地域資源を最大限活用し、必要とされる様々な社会活動や事業を、先端的技術も必要に応じて導入しつつ、多主体の協働によって共創する具体的方策が求められています。
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上郷ネオポリスの最新情報

大和ハウス工業営業本部ヒューマンケア事業推進部部長 瓜坂和明
 上郷ネオポリス再生の取組みは、2014年1月の自治会内の窓口「見守りネットワーク」委員との意見交換から始まり、2015年には自治会内に「上郷ネオポリスまちづくり委員会」が発足しました。そして2019年にコンビニ併設型のコミュニティ拠点(お茶場)として「野七里テラス」を開設しました。これからのまちづくりには弊社と上郷ネオポリス自治会、東京大学、横浜市ががっちりとスクラムを組むことが絶対条件と考えています。これから多世代が住むまちとしての郊外の魅力をつくるためには、ハードだけではなく、そこに住む人のためのソフトサービスを整備していくことで、今住んでいる人の定着と同時に新しい人の転入を進めて行くことが必要です。
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トークセッション

「これからの郊外まちづくりとハウスメーカーの役割」

〇街並み・景観について
東大小泉教授:上郷ネオポリスで目指しているものは新しいライフスタイルが実現するまちづくりであり、住環境・景観を継承するだけではなく、新しく創り出していくことが必要だと考えています。
大和ハウス瓜坂部長:街並みを保存したいという方もおられますが、一方で相続したけれど持て余している方もおられます。この実態を見直すことで、まちの価値も上がると考えられます。
〇空き家の大量発生について
大和ハウス瓜坂部長:野七里テラスの道路を挟んで向かい側のところに、“なごみテラス”という我々が常駐する場所を、小さなお店を改修してつくりました。ここで空き家のご相談を少しずつ伺うようになっています
東大小泉教授:ランドバンク的な機能を民間事業者がモデル的に担って、他の投資を呼び込むきっかけになる取組みではないかと考えています。
〇リビングラボ
東大小泉教授:企業と住民がインターアクションを積み重ねて、新しい、面白い取組みを連鎖的に起こしていくことが、リビングラボ的アプローチと考えています。郊外住宅地の家賃の低さや空間の豊かさをうまく活用して、新しいサービス事業を創造する可能性があると考えています。
大和ハウス瓜坂部長:高齢者は我々以上の見識をもっており、本気になれば非常に大きな力を発揮します。バリアフリーも大事ですが、そうした生きがいを日々生きる糧として我々は重要視しています。
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まちづくりと高齢化

積水ハウス(株) 設計部東京設計室 部長 上井一哉
 30年以上にわたって郊外型戸建て住宅地の分譲事業に関わった経験をふまえて、「まちづくりと高齢化」について考えてみたい。
 建築家の宮脇檀さんの考えに基づいて計画・開発された① コモアしおつ (積水ハウス)、② 柏ビレジ (東急不動産)、③ 桜ヶ丘ハイツ (不二企業)を事例としてとりあげる。
 コモアしおつはバブル期に開発され現在の高齢化率は13%程度であるが、サ高住や住宅型有料老人ホームが自然発生的に建設されはじめている。柏ビレジは開発から30年を経過し、買物等の利便性が問題だが、大学と協働し、住民サイドにも主体的な動きが出てきている。学生ならではの移動・物販に関するアイディアや空き家活用に関する面白い発想に基づいて、実証実験が開始されている。桜ヶ丘ハイツも、住民主体に「移動支援部会」や「お休み処部会」の活動が始まっている。
 こうした住宅地の「生みの親」である事業者の反省点として、均質な戸建ばかりの住宅地を短期間に販売したため経年すると顕著に高齢化が進むこと、建築協定等で用途純化を進めたことが今になって仇となっていることがある。
 「高齢者のつぶやきが聞こえない」「“あずまや”がほしい」「集まりの場がないのでお互いの声が聞こえない」「まちがどのように生まれ、育ってきたかを次の世代に伝えたい」等の住民の声に生みの親としてどう応えていけるのか、大きな課題である。
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郊外住宅団地の実態と再生

郊外住宅団地の再生
〜コトづくりから住民主体のまちづくりへ〜

大和ハウス工業株式会社ヒューマン・ケア事業推進部 瓜坂和昭
 大和ハウスグループでは、人・街・暮らしの価値共創グループとして、“明日不可欠 (ア:安全安心、ス:スピード・ストック、フ:福祉、カ:環境、ケ:健康、ツ:通信、ノ:農業) の課題”に日々取り組んでいる。その中で、創業者の教えである「儲けるよりも世の中のためになる事業を・・」をふまえて、1970年代から全国各地の61カ所で開発した戸建住宅団地の再生に取り組んでいる。具体的には上郷ネオポリス (横浜市栄区) と緑が丘 (兵庫県三木市) の2カ所において住民や地元の行政とも連携しながら具体的な再生事業を実行中である。
 上郷ネオポリスでは、5年前に40年ぶりに開発者として現場に立ち戻り、住民と一から関係づくりをするところから始めた。最初はネガティブな反応もあったが、現在では住民は自治会の中に「まちづくり委員会」を立ち上げ、大和ハウス工業は区や大学、その他企業等を巻き込んで「上郷ネオポリス協議会」を結成して各種活動を展開中である。住民の多くは70歳代にさしかかっており、この5年が勝負だと考えている。お茶場の開設、公園利用、分散型サ高住のじっつげん、若年層への賃貸事業、熟年層の生きがいづくり、廃校になった小学校の再活用などを実現しようとしている。民間企業としての次のビジネスとしてのフロー追求ではないストックビジネスを実現したい。
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郊外住宅団地の実態と再生

住宅団地の実態調査
〜『住宅団地の再生のあり方に関する検討会』報告より〜

国土交通省住宅局市街地建築課市街地住宅整備室室長 山下英和
 国土交通省では2017年度に全国の郊外住宅団地の実態調査を行った。①昭和30年度以降に着手された事業、②計画戸数1000戸以上または計画人口3000人以上の増加を計画した事業のうち地区面積が16ha以上のもの、③郊外での開発事業 (事業開始時にDID外) の条件を満たす住宅団地は全国で2,866団地存在した。
 2、866団地のうち約半分の1,468団地は戸建住宅のみの団地である。また、公的賃貸住宅を含む団地は507団地で公的施策が及びにくい民間団地、しかもその多くに戸建住宅が含まれるものが主流であることが判明した。
 第二次調査では、敷地規模100ha以上の大規模団地を対象に、そうした団地の実態把握と高齢化予測を行った。多くの団地は経年するとともに高齢化率が急激に高くなり、今後多くの問題に直面しそうである。国交省では、①住生活基本計画、②「住宅団地再生」連絡会議、③住宅市街地総合整備事業住宅団地ストック活用型事業等を通じて、団地の再生に取り組む地方公共団体や民間事業者を支援していきたいと考えている。
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東京大学高齢社会総合研究機構 (IOG)
ヘルスケアネットワーク(HCN) 研究会報告

「郊外における地域包括ケアシステムの見える化」

東京大学高齢社会総合研究機構HCN在宅ケア部会リーダー 田中康夫
 東京大学高齢社会総合研究機構 (IOG) では、地域包括ケアシステムを「まちづくり」として展開するために、多面的な取り組みを行っている。
 地域包括ケアを実現するには、「健康づくり・フレイル予防」「生活支援 (見守り・相談・食事等)」「24時間在宅介護・看護サービス」「24時間在宅医療体制の整備」の4つのサービスが必要かつ重要である。特に今後重要になる在宅介護・看護に関して、「新型多機能サービス」や多職種によるアセスメントチームの編成等を厚労省に提言している。
 また、今後急速に高齢化が進む大都市部を中心に地域包括ケアシステムを進めるためにIOGでは標準化を進めており、そのために地域包括ケアシステムの効果が地価等に具体的に見える化する仕組みなどを開発中である。
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郊外住生活の現状と問題点
−郊外住宅団地の住まい手の経年による
“からだ・心・交流”の変化と住まいのあり方−

さかえ住宅環境フォーラム会長 竹内康生
 さかえ住宅環境フォーラムは、栄区・港南区・戸塚区の郊外住宅団地代表者や行政、学識経験者、まちづくり専門家などが集まり、より住みよいまちづくりを目指した、課題やまちのルールづくりを進めている。
 1970年代に開発された郊外住宅地の多くは高齢化と若年人口の減少により、当初は想定していなかった買物施設や交通の利便性等に関する問題に直面している。ハウスメーカー等に望むこととして、①メンテナンスによる価値の維持・証明、②フェールセーフ設計、③チャイルドプルーフ設計、④定期的メンテナンス設計、⑤戸建て住宅団地のまちなみ整備がある。また、郊外住生活の問題点として、①福祉活動の担い手、②空き家問題、③高齢者のモビリティ問題、④若い人のまちへの参加促進等がある。
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少子高齢社会のまちの持続と再生に向けて
−協働的リノベーションが必要−

園田眞理子
 日本が世界一の高齢化国と云われて既に久しい。総人口に対して65歳以上人口率が25%超という状況は、かつてどの文明も国も経験したことのない事態である。また、日本の出生率は、これも世界の一、二を争うほどの低迷ぶりである。さらに、その結果として、今や人口減少は誰もが認める事実である。ちなみに、2014年6月の確定値で、前年同月から日本人人口は25.8万人も減少した。毎年、中規模都市が一つずつ消えていくような状況にある。
 こうした中で、私たちは何をなすべきであろうか。というよりも、何ができるのであろうか。そうした視点で、今後のまちの持続と再生に向けた解法を考えてみたい。
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