少子高齢社会のまちの持続と再生に向けて

−協働的リノベーションが必要−

明治大学理工学部教授 園田眞理子

地域開発2015.2特集「リノベーションのまちづくりの時代」より

はじめに

  日本が世界一の高齢化国と云われて既に久しい。総人口に対して65歳以上人口率が25%超という状況は、かつてどの文明も国も経験したことのない事態である。また、この高齢化とは、年少人口の減少という少子化と人間の長寿命化があいまっておきる現象であるが、日本の出生率は、これも世界の一、二を争うほどの低迷ぶりである。さらに、その結果として、今や人口減少は誰もが認める事実である。ちなみに、2014年6月の確定値で、前年同月から日本人人口は25.8万人も減少した。毎年、中規模都市が一つずつ消えていくような状況にある。
 こうした中で、私たちは何をなすべきであろうか。というよりも、何ができるのであろうか。そうした視点で、今後のまちの持続と再生に向けた解法を考えてみたい。

人のライフサイクルと街のライフサイクル

 図1_は、「もはや戦後ではない」と云われた1955年から2050年までの総人口、65歳以上人口、15歳未満人口と総世帯数の推移・推計を示したものである。20世紀後半とは、人が増え、家族が増え、子どもたちが増えた時代であり、それに合わせて新しい家と新しい街をどんどん造ることに間違いがなかった。ところが、である。最初の転換点は2000年にやってきた。65歳以上の高齢者人口が15歳未満の年少人口を上回った。第二の転換点は2008年である。幕末期以来、170年以上増えてきた総人口がピークに達し、その後はどのように推計しても人口は大きく減少していく。そして、第三の転換点は予測では2019年、もうすぐである。この年に総世帯数がピークに達し、減少し始める。世帯の数は必要な住宅の数に直結する。想定外の大量移民でもない限り、家余り、土地余りは厳然たる事実として私たちに降りかかってくる。

fig1  

では、日本中、どこでも一様に家余り、土地余りになるのかというと決してそうではない。実は、人と同じように街にもライフサイクルがあるという事実を私たちはまず認識する必要がある。人が生まれ、育ち、老い、次の世代にバトンを渡すのと同じように、街も生まれ、育ち、老いの時を迎える。次の世代に街が引き継がれなければ、その街は衰退し、やがて消滅する。だから、現世代が次世代に継承される努力をした街と、それを怠った街とではたとえ隣り合わせていたとしても、全く違う運命を辿る可能性が高い。