人口減少/少子高齢社会における
イノベーティブな次世代まちづくり

東京大学まちづくり研究室 教授 小泉秀樹

住宅生産団体連合会・成熟社会居住研究委員会は、令和元年度から東京大学まちづくり研究室教授の小泉秀樹氏のご指導をいただくことになりました。第1回目の研究会では小泉教授から新しい郊外のあり方として、イノベーティブな次世代まちづくりについてのお話と、新しい郊外のまちづくりが進められている横浜市栄区の上郷ネオポリスについてのお話を伺いました。

(1) イノベーティブな都市とは

 イノベーティブな都市と郊外が結びついてイメージされることはあまり無いかもしれませんが、私はこれからの郊外住宅団地はイノベーションと結びつき、郊外こそがイノベーティブになるのではと考えており、大和ハウス様を含めて、様々な民間企業の方々と一緒にお仕事させていただいています。
 イノベーティブな都市とは何かについては、ジェーン・ジェイコブスがまとめています。ジェイコブスによる都市イノベーションの条件とは「都市に多様な価値を持つ人々」と「多様な業種業態の集積」であり、多種多様な人が集まるとイノベーションが起きやすいとしています。そして都市の多様性が確保される要件は「各部における用途の混在」「分節化された街路」「建築物の年代や形式」「収益の多様性」「人が密に集まること」です。ジェイコブスはこれらをニューヨークのブロックを単位として論じていますが、郊外住宅地においてもある一定のエリア単位で論じることは可能だと考えられます。しかし、これまでの日本の郊外住宅団地を見ますと、都市の多様性が確保される要件は実現されてこなかったと考えられます。つまり、用途の混在は制限され、同じ時期に建てられた住宅に、同世代の方々が集まっています。そして新しい郊外住宅地が目指すものは、これまで実現されなかったものから逆算してつくられるのではないかと考えています。
 リチャード・フロリダはクリエイティブシティの条件を、様々なクリエイティブな才能や技術を持っている人の集まりと、多様な人々を受け入れる寛容さとしています。アメリカの文脈において、アマゾンやアップル、マイクロソフトのようなイノベーティブな企業は、郊外の家賃のかからないガレージで誕生しました。今のところ日本の文脈ではそういったお話は聞きませんが、新しい郊外として、イノベーティブな次世代型まちづくりの可能性はあると考えています。