郊外住宅団地の実態と再生

「住宅団地の実態調査
 〜『住宅団地の再生のあり方に関する検討会』報告より〜」

 

国土交通省住宅局市街地建築課市街地住宅整備室室長 山下英和

成熟社会居住研究会では、これまでハウスメーカーが建設を進めてきた郊外住宅団地の再生に取り組んでいます。今回は、国土交通省住宅局市街地建築課市街地住宅整備室室長山下英和氏に国交省で実施した住宅団地の実態調査についてご報告いただきました。

(1) 郊外住宅団地の全国実態調査

 郊外住宅団地は、戦後の高度成長期における産業構造の転換に対応した大都市圏への人口集中への対応のための国策として整備されたが、現在は①居住者の高齢化、②住宅等の老朽化、③バリアフリー化の遅れ、④近隣センター等の衰退、⑤小中学校等の遊休化、等の問題が顕在化しています。しかし、一方で、住宅団地は高い公共施設整備率を誇る優良なストックであり次世代に残すべき優良な資産と考えられます。
 国土交通省では地方公共団体に対して、こうした住宅団地の実態についての調査を昨年、第一次と第二次に分けて行いました。昨年9月に行った第一次調査は、5ha以上の住宅団地のリストを作ろうというところから始めたもので、主な調査項目は、①住宅団地の有無、②住宅団地の政策的位置づけの有無、③ 住宅団地の現状に対する問題意識、④住宅団地再生に係る取組の有無、⑤ 管内の住宅団地の概要 (面積、団地構成) です。全国の1741市区町村に対して、1724市区町村から回答をいただきました。
 この調査における住宅団地の設定は、①土地・建設産業局の提供する全国のニュータウンリストにある住宅団地、②計画的に開発された市街地であって一斉入居等住宅団地特有の要因によって課題が顕在化している一定規模以上 (概ね5ha以上を想定) の住宅団地、の2つの考え方に基づき、各市区町村に任意で判断してもらいました。この中の全国のニュータウンリストは、次の3つの条件を満たす住宅・宅地開発事業で開発された地区です。条件①昭和30年度以降に着手された事業、条件②計画戸数1,000戸以上又は計画人口3,000人以上の増加を計画した事業のうち、地区面積16ha以上であるもの、条件③郊外での開発事業 (事業開始時にDID外であった事業)。
 この調査で、全国の市町村が住宅団地として認識しているものが2,866団地存在することが分かりました。面積ベースで、その概ね半分が三大都市圏に立地しています。そして、100ha以上の大規模な住宅団地のうち、公的賃貸住宅又はURや公社の賃貸住宅を含まないものが7割くらい存在することが分かりました。さらに詳しく見ると、2,866団地のおよそ半分の1,468団地は戸建て住宅のみの団地です。戸建て住宅を含む団地は2,659団地です。さらに、公的賃貸住宅を含む団地は507団地です。つまり公的賃貸住宅を含まない、公的施策の及びにくい団地が大半を占めています。
 次に団地が所在する市区町村についてですが、こうした住宅団地があると答えたところは556市区町村で、割合にすると32.3%です。その上でその市区町村が策定した何がしかの計画の中に団地再生の位置づけがあるのは154市区町村ですので27.7%です。今後位置づけをするといったところが4.1%でした。さらに見ると、規模の大きな団地があるところほど、位置づけがある市区町村が多くなります。また、住宅団地について問題意識ありと答えた市区町村が350市区町村で、全体の62.9%です。具体的にどういったことに問題意識を持っているかについては、やはり「高齢者が多い」が69.7%と最も多くなっています。その他、「空き家」 「交通機能低下」、「生活利便性の低下」、「コミュニティ弱体化」が多く指摘されています。
 住宅団地再生の取組を行っているところは117市区町村で556市区町村の21.0%でした。具体的な取組内容は、主に「高齢者対応」、「若年世帯の転入の促進」、「空き家の利活用支援」、「地域交通への支援」、「コミュニティ力」の向上でした。住宅団地再生の取組を行っていない市区町村にその理由を尋ねており、「問題意識を持っていない」、「優先度が低い」が多くあげられています。しかしながら、「ノウハウ不足」、「人的資源不足」といった理由も挙げられており、ノウハウの共有・先進事例の横展開などの取組が有効であることが示唆されていると考えられます。