参加者:本日見せていただいた行先距離帯別の総合的満足度のデータでは、800km以上での満足度が最も高くなっていますが、200-800kmでの距離帯の満足度は100-200kmよりも低くなっています。距離が遠いほど満足度は高くなる傾向の中で、この距離帯だけ満足度が低くなっているのはなぜでしょうか。
谷口先生:よく質問されることですが、理由はまだよく分かっていません。800km以上遠いところまで移動する方は思い通りのことができて、移動で世界が大きく変わるということがありますし、飛行機で移動しているので金銭的な負担があっても、時間的な負担は少ないということがあるのかもしれません。200-800kmでは金銭的な負担と時間的な負担が大きいのかもしれません。
参加者:住宅の求められる品質のレベルが高くなってきています。二地域居住での住まいにも様々なタイプがあると考えられますが、メイン拠点とサブ拠点での品質の違いといった議論はなされていますか。
谷口先生:大事なポイントですが、私が出席している会議や委員会では、その議論が出たことはあまりありません。住宅の品質に関して、最低居住水準面積を撤廃するかとの議論は行われています。個人的には、建物としての住宅単体での省エネはとても厳しいレベルが求められるようになっていますが、その住宅が立地する場所による交通エネルギー消費の違いがノーチェックであることが問題と考えています。都心の住宅と郊外の住宅では、自動車利用状況などから、交通エネルギー消費が大きく異なります。エネルギーや災害のことも含めて、住まい流通に関する政策に、コンパクトシティの考え方をさらに反映すべきと、よく申し上げています。
参加者:二地域居住にとどまらず、3つ以上の住まいを考えるべきではないでしょうか。また、住まいの幅広い使い方を認める制度にしていくことも重要と考えられます。ホテルに近いような使い方や倉庫としての使い方も考えられます。住まいの幅広い使い方について詳しく分析したデータはありますか。
谷口先生:私も多拠点居住という呼び方をしたことがあるのですが、用語を二地域居住に合わせてくださいと言われました。二地域居住といっても、住まいを二つだけという考えではありません。住まいの幅広い使い方についてのデータはまだ無いと思いますが、幅広い使い方の重要性について同意いたします。
参加者:年収・職業及び幸福感・満足度との関連についてですが、フリーランスや会社経営など、もともと経済的に豊かで幸せな生活を送っている方々が、二地域居住を実施しているということもあるのではないでしょうか。二地域居住だから幸せという考え方について詳しいご説明をいただければと思います。
谷口先生:相関関係か因果関係かという問題ですね。どちらもあるだろうなと考えられます。前に学生が住む場所と幸福度の分析を行って、小学校の近くに住んでいる人の幸福度が高いという結果になりました。しかしこれは相関関係があっても因果関係はないということが明確です。データ分析を進めると、子供のいる家庭で幸福度が高いという関係が分かってきます。日本で最も幸福度が高い人たちが住んでいる場所は東京都港区です。相関関係と因果関係のどちらかをはっきりさせるには大規模なデータで詳しい分析を進める必要があります。
住団連:立地については、我々住宅業界としても、団地再生や街づくりに取組んでいく必要があります。二地域居住について、住宅業界として取組んでいく課題や期待される役割についてご教示いただきたいと思います。
谷口先生:やはり住まいは基本中の基本だと思います。その情報が、二地域居住意向者や実施者にどのように届くかというところですね。全国宅地建物取引連合会 (全宅連) 理事の井上氏は、立地する地域のことを含めて、二地域居住意向者に情報を届けていく努力していきたいとのお話をされていました。二地域居住意向者は、サブ拠点に快適に住めるかどうかについて不安を持っている状況だと思います。現在、多くの空き家バンクが取組まれていますが、情報の足らない部分が多く、あまり機能していないところがあるようです。日本にはこれだけの住宅ストックがあって、本来ならば色々と使えるようになるはずなのに、マッチングがうまくなされてない状況です。不動産の資産活用が進んでいないことについて、国民1人1人が問題意識を持つような情報発信があると、世の中も変わっていくのかなと感じています。生活の基本である住まいの産業として、自信を持ってメッセージを出していただければとありがたいなと思います。