講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


5.伝建地区の元魚屋をリノベーション
松村:  石井さんが思い描く本屋を実現するには、建物の場所と大きさが重要になりますね。ここは広々としていますが、何の建物だったんですか?
石井:  魚屋さんだったそうです。できるだけ街の中心部で大きな空間をお店にしたくて、この街に帰ってから丸一年くらい探したんですよ。なかなか見つからなかったんですが、知り合いが「あのシャッターが閉まっているところ、中は広いらしいよ」と教えてくれたました。この場所は知っていましたが、ずっとシャッターが閉まっていたので見落としていたんです。
松村:  開口部も大きいですね。もともとこうした外観だったんですか?
石井:  壁も窓も何もない状態だったので、福岡の内装デザイナーの方にインテリアの設計と合わせてお願いしました。ここは伝統的建造物群保存地区なので、外壁は茶色や黒にすることになっています。外装としての大きなガラス張りは難しいようですが、大家さんが「外装のシャッターはいじらずに、その中に内窓を付ける分には問題ないんじゃない」と言ってくれました(笑い)。
菊地:  伝建審議会に上がってきた記憶はないので、あくまでインテリアを変えたということなんでしょうね。外装を変えるとなると許可申請が必要になるので、そうなると大変だったと思います。
鈴木:  お店のデザインはどんな点を重視しましたか?
石井:  街に対して風通しが良いというか、外に開かれた場所にしたいと考えました。田舎のお店は中が見えないことが多いですからね。現代的な内装にしたのは、古いものを守ってばかりじゃ何も生まれないと思ったからです。伝建地区は同じような雰囲気の建物ばかりですが、様々な個性がある街から文化は生まれてくると思うんです。伝建地区は文化を残すために指定されますが、新しい文化を生みだせない場所になっていると感じます。





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