「ユートピアとしての郊外」。今回のお話は色々と勉強になりましたが、一番記憶に残っている言葉です。「ユートピア」はやや時代にそぐわない言葉ですが、その意味を現代的に解釈することが重要だと思います。
座談会の中でも触れましたが、私自身は「つくる生活、生産する郊外」と称して、既存住宅の手直しも、食糧生産も、エネルギー生産も、水の再利用も、廃棄物処理も、全部楽しみながら自分たちでやってしまうような場の創出を、既存郊外住宅地の再生で実現できないものかと考え始めています。これも新しいライフスタイルを念頭に置いた現代的なユートピア構想になり得るものと勝手に納得しました。
もう一つ記憶に残ったのは、道に沿った単位で郊外の生活空間のまとまりを考えるのが妥当だという先生のお考え。これを聞いて漸く「つくる生活、生産する郊外」にも、空間的なイメージが結びついてきそうです。
郊外で育った者として、ユートピア構想としての起源とは無関係に展開してしまった郊外を、元の構想に近づける夢を語るのに躊躇することはない。今回の座談会を通して、その思いを一層強くさせられました。
(松村秀一)
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