講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


2.食を介した家族のコミュニケーション

 7.質疑応答2:食の多面性
松島:  食事の時に、いただきますという挨拶はするのでしょうか?前に中高生について調べたのですが、言わない人が2割ほどいました。食事のことについて親からうるさく言われないという人が結構いるのですよ。
松村:  言われるとしたらどのようなことなのでしょうか?
横江:  残すなとか、一つずつたべなさいとか、そういったことですね。
松村:  食事に関わるしつけは意外と難しいですよね。教育されてきた環境が違うので、父親と母親とでしつけられ方が異なっていますから。
松島:  そうですね。例えば、食事の時にテレビをつけるかどうかなどは典型ですね。中高生の調査から食事の時に必ずテレビをつけている人が65%、時々という人も含めると9割にもなります。平日だけでなく休日もそんなに変わりませんね。
西田:  基本的な話になりますが、晩御飯では全部出来上がってから食べるのか、それとも母親が常に作っていて暖かいものを食卓に運んできてそれを食べるのか、どちらが一般的なのでしょうか?
松島:  中高生に対する調査によると、誰かが帰った都度に出来上がったものを暖めているようですね。平日はまず家族全員が揃うことはないですから。
鈴木:  共食の国際比較はされているのでしょうか?外国では普通に共食がなされているように思うのですが…。
松村:  外国では一緒に食べていると思いますね。例えば、中国では男女共働きですが、6時半くらいに帰ってきて、二人で作って一緒に食べていますね。日本でも、昔は父親も結構一緒に夕食を食べていましたけれどね。
松島:  私もカリフォルニアに住んだことがありますが、共働きで子どものいる人は早めに帰って夫婦二人で料理を作って、家族が揃って共食をしていましたね。
西田:  でも、みんなで共食をしようと言うよりは、一緒に作ろうよと言った方がコミュニケーションを取りやすいのではないでしょうか?
横江:  私もそのような気はしますね。ちなみにアンケート結果によると思春期の子供たち自身が感じる居心地のいい場所は、1位が子供部屋、2位がリビング、3位がダイニングとなっています。食空間におけるコミュニケーションも重要であると思います。
松島:  私が最近行った中学生へのアンケートでも、平日はなかなか一緒に食事を取れないけれど、もっと家族と一緒に食べたいと思っていることが分かりました。平日に一緒に食べることは難しくても、土日には一緒に食べることが重要だと思います。
松村:  ダイワハウスさんの商品企画につながる調査では、現在最も注目しているのはキッチンになるのですか?
横江:  確かに「食」は大きなテーマのひとつだと感じます。
松村:  定年後の食生活はどのようになっているのでしょうか?旦那さんは、必然的に食事を作ることになりますか?
松島:  そういう印象があるのですが、調べてみるとそうした方は増えてないですね。
普段するのはお茶を入れるぐらいです。もっとも、これから定年を迎える団塊世代に聞くとこれからは料理をしたいと言う人が結構います。
松村:  そうなると趣味的になってくる可能性もありますね。
横江:  50〜60代の方々にアンケートをすると、奥さんは、旦那さんが食事を作ってくれることをとても望んでいることが分かります。趣味というよりも自立して欲しいと思っているようです。
松島:  夫が料理できないと三食世話をしなければなりませんから、夫の定年前よりもかえって生活が縛られてしまいます。生活スキルの基本として、掃除などよりも料理を作れるようになって欲しいと思っている奥さんが多いみたいですね。
鈴木:  それは根底で介護につながることかもしれませんね。



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