講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


1.友人との共食で子育て期を楽しく


 3.共食から得る喜び

品数は飲み物などを入れて4.3品、自分で作る品数が2.7品といったところです。メニューは、「おいしい」、「子供が食べられる」、「見栄えがよい」といった基準で決めています。こうして作られた料理は共食の話題の一つになります。自分が作って評判のよかった料理としては、「サラダ」、「パスタ」、「カレー」が上位3位です。これらは普段作っているものと同じでしょうし、聞いてみますと、残ったらそのまま夕飯にできるようなものを作っているとのことです。また、友人の作った料理がおいしかったとか簡単そうということで、自分の家でも作ったという人が60%ほどいました。つまり、共食が新しい料理を見つける場にもなっているわけです。

共食の準備ですが、「とても楽しい」と「まぁ楽しい」を合わせると7割強になります。しかし、この年代の人たちは普段の食事作りは楽しいとは思っていません。普段の食事作りは楽しいですかと聞くと、他の年代では65%が「楽しい」と答えていますが、幼い子供がいる母親達でそう答える人は4割もいません。逆に言うと、共食がどれだけ楽しいのか、この結果はよく表していると思います。余談ですが、30〜50代の男性の4割程度がお料理をしますが、その9割は「楽しい」と答えています。頻度的にも少ないですから趣味としては楽しいのでしょう(笑い)。

料理にはそれほどお金と手間をかけていません。予算にして平均3251円になります。これが母子4組の1回分の食事の代金です。もっとも、買ってきた分も加算されますから、女性に言わせると高い感じがします。しかし、冷蔵庫にあったものだけで済ませることはまずありません。ただし、予算は就業形態によって異なります。フルタイマーの共食は土日が多いので、夫も参加してアルコールをとることも多いですから。また、共食の頻度も少ないため、一回の共食のお料理の品数も多くなって予算もぐっと増えます。

料理にかける時間は1時間50分です。普段の平均は1時間ほどですが、お菓子を作ったりする場合に長くなるようです。時には、出前や市販品を利用したり、持ち寄りをお願いして友人の助けを借りたりして、かける手間を減らしています。お料理以外の準備や後片付けも特別なことはしていなくて、お掃除を少し念入りにしているだけです。後片付けの負担感なども聞いているのですが、ヒアリングでは「2対8くらいで、負担感より楽しさの方が上回る」と答えています。



共食について様々な観点から評価してもらったのですが、とにかく「楽しい」という評価になります。それらを因子分析すると5つの因子が抽出されました。まず、「新しいことに取り組むきっかけ」が得られたという評価、次に「料理への関心が高まった」こと、三つ目としては「気持ちが前向きになった」などの情緒的サポートが得られたという評価、四つ目には「子供達の交流の機会になった」こと、そして最後に共食を通じて「友人と仲良くなれた」ということです。つまり、友人との共食は食を媒体としてコミュニケーションを図る場であり、社会との接点になっていると言えるかと思います。

以上の結果から、家に呼んだり呼ばれたりする共食は、友人とのコミュニケーションを促進させる一つの方法になっています。そして、そのような地域の人々との交流は孤立しがちな子育て期の母親にとって、社会との接点であり、ストレスを抱える母親たちの精神的な支えにもなっていると言えます。また、キッチンやリビングが友人を呼びたくなるような空間になっていると、共食をより行いやすくなることにもつながるかと思います。



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