講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


2.子育て座談会


2.ファミリーサポートセンター

木多: 現在は箕面市の集合住宅に住んでいます。大阪大学から車で3分程の距離ですが、ここに決めるまでに子育てのために色々なことを調べました。子供が通っている小学校は北摂の中でも最も児童数の多い校区なのですが、それを調べた上でその小学校の真ん前に引っ越したんです。と言うのは、箕面市のファミリーサポートセンター(以下、ファミサポ)をその小学校のたくさんのお母さん方が活用していることが分かったんです。
松村: ちょっと、すみません。ファミサポって何ですか?
木多: これはウェブで見つけた資料(http://www.jaaww.or.jp/famiy/what/main.himl)ですが、ファミサポには子供を預ける依頼会員と子供を預かる提供会員が登録されています。何がよかったかと言うと、このファミサポを通じて、同じ小学校の同級生のお母さんに子供を預かってもらうことができたんです。上の子はもう中学生になったので利用していませんが、下の子がまたお世話になっていて、それはもうすごく助かっています。
瀬渡: 箕面市はとても進んでいますよね。
松村: 箕面が?ということは、箕面市に住んでいる方々の意識が進んでいるんですか。この仕組みを一生懸命やっている人が箕面にいるっていうことですか?
瀬渡: これは平成6年頃から国全体で進めている仕組みのようですね。自治体によっては取り組んでいないところもあるんでしょうけど、結構増えていますよね。
鈴木: どれくらい普及しているんですか?
木多: 1年ほど前にインターネットで見たときは、全国で約300の市町村が出ていました。
松村: 提供会員という方が個人で自分の家で預かってくれるんですか。家が多少広くないと、無理ですね。
木多: そんなことないです。子供がお友達の家に遊びに行く感覚ですから。実際、箕面市のファミサポが調整して下さったおかげで、私の子供はずっと同級生のおうちの提供会員さんにお世話になっていたので、ほんとにお友達の家に遊びに行く感覚でした。同級生といっしょに宿題をして、公文の塾とかもいっしょに行っていましたね。
瀬渡: 保育所のお迎えに行く時間に間に合わない時など、短時間の利用もできるんですか?
木多: それもできますし、小学生になって学童保育のない学年でも活用できます。私の場合は毎週ではなかったんですが、困った時はいつもお願いしていました。
鈴木: こういう仕組みは今や常識なんでしょうか?
加茂: 知人にもけっこう利用している人がいますよ。宝塚や奈良に住んでいる友人達からも勧められました。京都でもきっとやっているから入りなさいよって。京都でも調べたらあったのですが、利用するためには講習を受けないといけないんですよね?依頼会員のための講習と提供会員のための講習がそれぞれあるらしいですね。
松村: 依頼会員と提供会員の数のバランスが取れているんですか?仕組みのことを考えると、依頼したい人は多いけど面倒見てくれる人は少ないような気がしますが…。
木多: 私は強引に依頼会員だけにしましたが、できれば提供会員にもなって下さいと言われました。お母さんが働いていても、お休みの日がずれていたら預かることも可能ですからって。そうやって鍵っ子同士のネットワークが出来ると、親同士のつながりも生まれてくる。ファミサポはそうした役割も果たしているようです。
松村: ファミリーサポートセンター。国もいいことやってる(笑い)。
瀬渡: 料金はどうなっていますか?
木多: 結構安くて1時間当たり700円です。あと、食費は実費で払います。ベビーシッターを頼むと1時間当り2500円くらいになりますから、それを思えば格安です。
加茂: おもしろいなと思ったのは、お金の受け渡しに行政が介在しないんですよね。子供が行くときに向こうのお母さんに直接払って下さい、とホームページに書いてありました。
鈴木: 規定はあるんですよね?
木多: 規定もあるし、提供会員は受け取った報酬額をセンターに報告する決まりになっています。
鈴木: ファミサポの提供会員は子供がいる家とは限らないんですか?
木多: 限らないです。同じ小学校区の中で何軒か紹介してもらいましたが、おばあさんが預かるというのもありましたね……なんか私ばかりしゃべっているようですけど……。
小田切: 実は、私もファミサポを知って申し込んだんですけど、結局は使わなかったんです。木多先生のように入念に下調べができれば違っていたかもしれませんが(一同爆笑)。
というのも、まず再就職が急に決まっちゃったんです。木曜日に採用が決まって月曜日から来て下さいって。すぐさま市役所の保育課に駆け込んで、すみません来週の月曜日から預かって欲しいんですと頼みましたが、さすがに無理でした。そこで、職場に掛け合って週三日という形で働くことにしました。週三日までなら保育所の一時保育が利用できるからです。そのときにファミサポの存在も教えてもらったんです。どうしてもお迎えに間に合わないとか、もう一日出勤してくれという時には、ここで預かってもらえるというわけです。システムを説明してもらってから、近所に提供会員さんいらっしゃいますかと聞いてみると、依頼会員の数はものすごく多いけど提供会員はほとんどいないと言うんです。
木多: 豊中市ですよね。私も以前は豊中市に住んでいたから分かります。
松村: あっ、だから木多先生は引っ越したのか!
小田切: 結局、自転車で15分程の保育所に預けることになって、その近くの提供会員さんを紹介してもらって、電話でお話させて頂いたんですね。大変急な話でご迷惑をおかけしますけどよろしくお願いします、という気持ちで。そうしたら、「第何週の何曜日と何曜日はダメです」「いろいろ活動をやっているからいつも預かれるわけじゃないから」というようなことをその時言われたんです。初めての電話で子供のことなど聞かず、いきなりこう言われたので結構こたえました。こんなことを言う人に自分の子供を預けるのか、と心配になってしまったんです。
加茂: それはファミサポの制度じゃなくて提供会員さんのパーソナリティにひっかかったんですね。
小田切: そうなんですよ。もう、えーって思って。他のお母さんたちにも聞いてみると、子育てにしんどいお母さんたちを支えてあげようっていう純粋な気持ちの提供会員さんもいらっしゃるけれど、時給800円のバイトみたいな感じで考えている人もけっこういるんじゃないか、と言われて。行政が関わっているからといって簡単に信じたらだめだなと思いました。
松村: それは難しいですね。いきなり知らない他人ですもんね。
小田切: ですから、木多先生のところみたいに合えば、ものすごくいいと思うんですよ。晩ご飯も食べさせてもらって。
木多: 私もそのあたりが心配で、いろいろと調べて、北摂のなかで小学校の児童数が最も多い校区に引っ越したんです。その小学校の真ん前に。そういう地域なら、提供会員をされるお母さんがいっぱいいらっしゃるだろうと…。それに、小学校の前からならどのおうちに行くのも近いでしょうし。
松村: すごいなー、ノウハウ本が書けそう(笑い)。
鈴木: 最近、高齢者の介護環境を求めて引っ越すのはよく聞きますよね。校区選びも、それと同じぐらいシビアなわけですか。
木多: 公立小学校の校区を調べに調べました。
瀬渡: 子供を一時的に預かってくれる所とか、そういうサポートをどうやって探すか、みんな工夫してるって聞きますよね。
木多: そうですね。小田切さんがおっしゃったように、信用できるところでないと預けられませんからね。
鈴木: 木多先生の場合は、子供の友達のお母さんに預かってもらっているようなものですよね。それはやっぱり電話で突然依頼するのとはちがいますよね。でも、なにか知り合う機会があれば、ぜんぜん知らないおばあさんにお願いするというものあり得るのかな。
木多: 子供のお友達が通っていたりすれば、ぜんぜん知らないそのおばあさんの所にずっと通うということもあるかもしれませんね。
瀬渡: 子供もね、あっちこっちたらい回しにされたら落ち着かないですよね。やっぱり同じような環境の方がいいですよね。
松村: それは新しい家族みたいなものですかね。ずっと続いていくと。
鈴木: 近いものはあるね。
松村: これから小田切さんがやろうとされている半塾学童というのは、ファミサポのように家に預かるというものとは違いますよね。
小田切: そうですね、ちょっと違いますね。家に預かるというよりは、場を作ってそこに子供達が来るという活動です。普段は通ってなくても、お母さんお父さんが家にいない日だけ来るというかたちもありにしたいと思っています。学童っていうと、継続的に通わないとなかなか入れなかったりするので、もう少し柔軟なものにしたいと考えています。
松村: いくつからいくつまでが対象ですか。
小田切: 今考えているのは小学生からです。あと、学童ではありませんが中学生も対象に入れて、学校の勉強では聞けないようなことを大学生のお兄ちゃんお姉ちゃんから聞けるとか、そういった形のサポート塾を考えてるんです。
鈴木: ファミサポとは違ってもう少しパブリックな場を作ろうというわけですね。個人の家に行くのとはまた違った意味がありそうですね。


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