まちづくりと高齢化

 

【質疑応答・意見交換】

成熟研委員:研究を行われた郊外型戸建住宅地では、新しい世代の転入に関する取組みを行っておられますか?
積水ハウス:高齢化率13%の「コモアしおつ」は、分譲販売を進める途中で子育て施設を誘致しています。柏ビレジでは、古い住宅を買い取って、子育て中の若年世代が買いやすい価格帯で販売することが有効と考えられますが、建築協定で細分化できない問題があります。また、駅への送迎バスがなければ若い世代が入って来ないようです。ただ柏ビレジでは、東急ストアが撤退しましたが、若い人たちが商店街の活性化のためのコミュニティカフェづくりに関わっておられます。
成熟研委員:建築協定は数年おきに更新しますので、そのときにルール変更を居住者と一緒に考えていければと考えています。郊外の空き家については、今は子ども世帯は遠くに住んでいて、空き家を売ることもなかなかうまくいかないというケースが多く、相続放棄したいという方のお話を聞いたこともあります。空き家活用の可能性はこれから広がると思います。ただ、自治体はコンパクトシティの考えから、郊外から中心市街地への住替えを進め、住み続けられる郊外のまちづくりには力をいれない傾向になりつつあります。
積水ハウス:どの自治体も今、コンパクトシティを進めており、新たな郊外住宅団地の建設にはストップがかけられています。しかしこれまでつくった郊外住宅地を切り捨てるわけにもいかないという責任を、我々事業者側も行政も負っていると思います。郊外住宅地の人口が市人口の1割以上を占めるようなところでは、行政も郊外住宅地を無視できないと思います。建築協定などの見直しに、住民の皆様が問題意識をもって取組んでいく上で、我々事業者と行政が積極的に仕掛けていかなければ、再生への道が見えてこないと思います。
成熟研委員:「コモアしもつ」は人口バランスがとてもいいようですが、どういう方が住んでおられますか?
積水ハウス:販売当初はバブルの頃で、東京へ2時間近くかけて通勤される方々が主にお住まいでした。最近は、地元の中山間部や駅周辺などから転入される方が増えています。
浅川氏:柏ビレジでは、居住者主体でコミュニティカフェが始められ、居住者がローテーションを組んで、紅茶を出したりケーキを出したりということが組織的に行っておられます。最初は女性たちがNPOをつくって運営しておられましたが、やがて男性たちが隣で同じようなことを始められました。柏市では、介護保険の地域支援事業の受け皿を市内につくるための助成を行っており、それを利用されたそうです。以前はコミュニティに出てくるのは女性だけと言われていましたが、今は男性も出てきています。
積水ハウス:柏ビレジはハワードの田園都市構想にもとづいてつくられたまちで、もともとの居住者もそのコンセプトに感銘を受けて入居された、社会的地位の高い方々でした。以前は男性は自尊心の高さからまちに出てこないということをうかがったことがありますが、今は男性もまちに出てこられています。
成熟研委員:自治会が積極的に動いているところもありますが、再生へのロードマップを引くために、事業者や行政が関わっていくことが必要ということだと思います。


以上