郊外住宅団地の実態と再生

「郊外住宅団地の再生〜コトづくりから住民主体のまちづくりへ〜」

 

(4) ビジネスモデルーニーズ拡大と消費拡大

 まちづくりに関わってきて、分かってきたことは、やはり居住者主体だということですね。いくら民間企業や大学などがまちづくりをしようとしても、30年も40年も前からある団地を再生しようとしているわけですから、そこに30年や40年住んでいる人がいるので、この方たちを主体に物事を考えないとまちの再生はできないということです。40年以上のブランクを改修して、信頼関係を再構築していくということ。居住者の中に専門分野を立ち上げ、居住者主体の専門部隊をつくるということ。それから企業と居住者たちの理事会の間での約束を取り交わすということです。まちが再生するというところまで行かない限りいいことは出ないし、そこにビジネスは生まれないということですね。どんどん地価が下がって、どんどん空き家が増えていく中で、まちの再生ができない限りまちが錆びていくわけですから、再生するモデルをつくるまでは同じ方向性を向いて一緒に行こうという協定を締結するということ。居住者たちが我々企業と一緒に考えられる協議会というものをつくるということ。定期的にワークショップやイベントというもの居住者たちを巻き込みながらやっていくということ。そういうことをやっていかなきゃいけないなということを、4年やってみてやっとわかってきたと思います。
 企業としては、まち再生のビジネスモデルはどういうものだ、どこで利益を出すのだということが問われます。まちを再生させることで、その地域内の消費を持続的に拡大させていくことで儲けるということだろうなと、突き詰めて行ったわけです。家がどんどん建つわけではなく、フローではなくてストックビジネスみたいなものどんどんつくっていくということがどうやらまちのビジネスモデルではないか。では支出を拡大するためにどうすればいいのかを考えると、「人数を拡大する」ということと、「一人当たりの消費を拡大する」ことになりますね。人数を拡大するということは、今の居住者の流出を止めて、新しい居住者の流入を助けるということです。生涯暮らせるセーフティネットとして、医療・介護・交通などのインフラを整えていくと同時に、55から60歳の、これからネクストライフに入って行くという方が住みたくなるまちとして、仕事ができる、交流をもてる、エンターテイメント性があるようなまちにしていくということです。若年層に関しては、一戸建ての家を買うということ自体が難しく、持ち家志向から借家志向に移行している方達が結構います。戸建て賃貸住宅という方法もあるではないか。子育ては小学校から大学ぐらいまでの15から20年の間で、住宅ローンは35年で組むわけですよね。子供達が巣立っていって、使わない部屋が残った時に、20年近くのローンが残っているということに、今の20代30代の方たちはもう気づいてしまっています。せっかく大きな空き家があるわけですから、それをリノベーションして15年ぐらい、家賃7,8万くらいで住めばいいのではないか。
 一人当たりの消費の拡大については、原資を確保しないといけない。保有資産を活用するためのリバースモゲージがよく言われ、皆さん貯金を結構お持ちなのですが、生きがいとか、安心とか、健康とか、つながりとか、これから30年以上あるネクストライフにこの原資を活用していくビジネスモデルという方法があるのではないか。皆さんに聞くと、元気があるけど行くところないとか、お金はあるけど使い道がないという話が多いわけですね。ではどういう要求があるのかと言うと、生きがいやつながりを持ちたい、将来介護施設に入れるような優先権、大きな家からシェアハウスや平屋戸建てへの地域内住み替え、日ごろの健康をサポートなどがあげられます。そういうところは仕事に結びつけることができないのかについて試行錯誤しているところです。ベッドタウンという価値がなくなってしまった以上、それに代わる価値を作らないといけない。