スウェーデンのコレクティブハウスにおける
 共食活動の運営と環境

 

【質疑応答・意見交換】

成熟研吉田座長:スウェーデンではマスクをしておられない方が多いというお話を伺ったことがありますが、スウェーデンでの新型コロナによる生活の影響はどのようなものでしょうか。
水村教授:オミクロンの感染はあまり拡がっていないようで、三回目のワクチン接種が進んでいるからかなと思います。欧米の方々は前からあまりマスクをしない傾向がありますが、スウェーデンはマスクを強制しないことで世界的に注目されました。昨年ヨーロッパの学会でコロナ下の状況について情報交換したのですが、ヨーロッパでは市中よりも、高齢者住宅・介護住宅の中でクラスターが発生して亡くなった方が多いのではないかというお話を伺っています。またスウェーデンでは胃瘻(いろう)のような無理な延命しないという考え方があり、高齢者住宅内での無理な延命は行われていないということもあるのかもしれません。フェルドクネッペンでの状況を友人に聞いたのですが、40歳以上の仕事を持つ方で、外で感染した方がおられたが、住宅内での感染は無かったとのことです。コモンミールは中止されていましたが、一人暮らしの方が多く、孤独に直面してしまうことが課題なので、“フィカ”というお茶の時間は続けていたそうです。昨年11月くらいからコモンミールも少しずつ再開しているそうです。12月にはフェイスブックにコモンミール復活と書かれていました。
WGメンバー:スウェーデンにはコモンミールのためのスペースの無い住宅もありますか?コモンミールのスペースのために家賃が高くなる傾向になるのではと思いますが、どの程度高くなっているのか、それが許容できる範囲なのかなど、分かれば教えて下さい。
水村教授:所有形態で考え方が違ってきて、フェルドクネッペンのような公的賃貸住宅ですと家賃が発生しますが、他の2つは払い下げられてしまって、協同組合が所有し、住民が居住権を持っているという考え方です。家賃が発生すると共用部分が上乗せになるため、通常の公的賃貸住宅よりも家賃は高めになります。しかし公的賃貸住宅の数が減少してしまっていて、待機期間が10年以上もかかるという状況です。一般の公的賃貸住宅よりは住みやすいので安く居住することを目的にコレクティブを選ぶ人がおられる状況です。ただ単に安く住めるからコレクティブハウスに住んでいて、住民がコモンミールには関わらないという状況になるということもあり、それをどう防ぐかが課題になっているようです。住宅の共用空間については、日本よりも一般的なのではと、大学の学生寮を見て感じます。高齢者住宅では高齢者同士の関わりを生み出すために、共用空間を配置するということがあります。
WGメンバー:日本でも共用空間を住宅のプラスαとしてつくっていくという傾向は生まれているのではと感じています。
成熟研吉田座長:水村先生がスウェーデンと比較されて、日本ではこうすれば共用空間の利用がうまく行くということはありますか?
水村教授:日本人は、ハードウェアには目が行き届くところがあり、サ高住でも有料老人ホームでも共用空間を豊かにつくっていますが、それがなかなか利用されていないということがあるようです。ハードよりもソフトウェアの問題と思っています。住民がお客様になってしまうのではなく、何らかの役割を持つような運営をしていくことが重要であると思います。それが若さを保ち、健康寿命を長くする上でも重要なポイントであると最近考えています。
WGメンバー:コモンミールのコストが負担額を上回る分について、住宅の運営予算から援助しているとのことでしたが、その運営予算の財源はどういったものですか?
水村教授:運営自体が住民に任されていて、協同組合型においても居住権所有者が組合費を払っているのですが、組合費を財源に、様々な活動に予算配分しています。コモンミールの援助や住宅の修繕、庭のメンテナンスなど、予算配分も住民自ら検討しています。財源を保つために、組合費だけ でなく、フリーマーケット開催などの努力もしておられます。公的賃貸住宅ではファミリィ・ボスターデル社に家賃を支払っており、こちらから運営費用を予算の形で住宅に提供し、やはり住民自ら予算配分・運用を行っています。
WGメンバー:コモンミールが入居理由ではないという方の、コレクティブハウスへの入居理由はどういったものでしょうか。
水村教授:先ほどの回答にも関連しますが、大都市部では適正な家賃の住宅になかなか入居できないという状況で、コレクティブハウスの待機期間が公的賃貸住宅の中では短いということがあります。協同組合型でも、一般的な居住形態ではないので、普通の分譲住宅よりは入りやすいということがあります。そのことだけを理由にコレクティブハウスを選択して、コモンミールに関わらないという方がおられます。
WGメンバー:コレクティブハウスの運営をやめる理由の1つが自治体の理解が無いとのことでしたが、どのような問題が生じたのでしょうか。
水村教授:コレクティブハウスは住民自ら予算配分を決めると言った自主性の高いもので、住民が住宅運営に深く関わります。そこを自治体が理解しておらず、自治体の政策方針に従わないからということで、コレクティブハウスをやめてしまうことがあります。