スウェーデンのコレクティブハウスにおける
 共食活動の運営と環境

 

(3) コレクティブハウスにおける共食活動の運営と環境

1) 調査概要
 このたび、ストックホルムの多世代型及びシニア型コレクティブハウスを対象に、集合住宅コミュニティの活性化を促す環境・運営の仕組みを明らかするための3つのタイプの調査を実施しました。
住民に対するアンケート調査:協働での調理活動、共食活動(コモンミール)への関わり方・評価に関するアンケート調査
各住宅のコモンキッチンの使われ方に関する観察調査
各住宅のコモンミール運営に関するヒアリング調査
 調査対象は、フェルドクネッペンFardknappen(シニア型:1993年にシニア型コレクティブ第1号として運営開始、総住戸数43戸<37〜75m²>、共有空間面積400m²)、トゥルシュテッゲンTullstugen(多世代型:成人50名、子ども及び若者20名の居住者・共用空間面積:100m²)、セーゲルステシオンSodra station(多世代型:総住戸数63戸)です。ストックホルムでは、90年代以降の住宅市場の民営化の中で、コレクティブハウスを含む公的賃貸住宅の民間事業者への払い下げが行われました。トゥルシュテッゲンとセーゲルステシオンは両方とも払い下げの後に、協同組合所有型のコレクティブハウスとしてとなったものです。トゥルシュテッゲンは元々コレクティブハウスとして計画されていませんでしたが、払い下げの後、2000年に住民発案によってコレクティブハウスとして運営開始しました。セーゲルステシオンは1987年に公的賃貸の多世代型コレクティブハウスとして運営開始し、その後協同組合所有へ移行しました。

2) コモンミール活動
 フェルドクネッペン住民の年齢は56〜94歳、平均年齢は70歳です。調理チームは6チームで、各チームは8〜11名で構成します。 調理チームはさらに1日のうちで2チームに分かれて活動しています。第1グループは、調理、テーブルセット、夕食の準備などを、第2グループは食器洗いや食堂の清掃を担当します。また、住民だけではなく、近コレクティブハウスに関心のある方、将来住んでみたい方、一緒に食事をしたい方などによるサポートメンバーが、各チームに何名か所属しています。
 メニューはフェイスブックやホームページ、住宅内の掲示板に掲載しています。また、各住戸にメニューを配布しています。掲示板に毎日の登録用紙が掲示され、当日の朝9時が最終のエントリー期限となります。。用紙には、コモンミールへ参加する日や人数、ベジタリアン食の必要性などが記載できます。適正な量の食事を作るのはなかなか難しいのですが、残った食事はテイクアウト用として販売します。
 コモンミール活動のため住宅内で1枚9SEK(日本円でおよそ100円)のクーポンを購入します。クーポンはシートで販売されており、住民は200〜600SEK程度のシートをまとめ買いします。月〜木曜日は1食3クーポン、金曜日は1食5クーポンを支払います。各調理チームは担当週の初めに3000SEKを受け取り、食材を購入します。
 試算によると、1食のコストは37SEKであり、各自の負担額を上回ります。そのため住宅の運営予算からの資金援助が行われています。
 ヒアリング調査から次の様な声が聞かれました。一人で食事をつくるよりも、隣人と共に作業することには様々な利点があります。自分自身が、あるグループに属しているという感覚が得られると同時に、自分の能力に応じた貢献を果たしているという実感が得られるようです。ただ 調理チーム内でメンバー同士が上手くやっていけるかということがあり、1週間のスケジュールを立ち上げて、調理や食器洗いの担当を割り当てる時に、用心が要るようです。
 お客さんが一緒に食事することも可能です。
 フェルドクネッペンのコモンダイニングは、前面道路から見通しのいいところに配置されているのですが、よりスタイリッシュなダイニング空間に模様替えしようと、住民によるワークショップが行われました。
 コモンミールは、トゥルシュテッゲンやセーゲルステシオンでも行われていますが、具体的な運営内容は、それぞれの住宅で自分たちのニーズに即した方法がとられています。