街の表情

 まちなみにも、人間と同じように、多彩な表情を持ち合わせています。 建ち並んでいる建物の種類、建物の規模、一つ一つの建物の窓や看板などの付き方などや、建物のデザインによって作り出される表情、また、朝の表情、昼間の表情、夕方、夜の表情と時間によって変わるものや、そこに集まる人たちによってもその表情は変わり、二つと同じ街並みは存在しないのです。

 街の表情は、まちなみを作っている建物や街路樹などの様々な要素の色や形、そしてその組み合わせ方や構成、また1日の中で変わる光によって表情は作り出され変化します。例えば、銀座のまちに建ち並ぶ建物の高さや歩道からの距離がバラバラだったらどんな街になるでしょう?きっと雑多なまちになってしまうでしょう。でも、建物の高さや、窓の位置や大きさ、そして建物の歩道からの距離がそろっていると、整然としたきれいな銀座らしいまちなみになるでしょう。でも、ただ整然ときれいに並んでいるまちなみが必ずしも良いとは限りません。例えば、下町の情緒や風情溢れるまちなみは、銀座のように整った街ではないが、家から植木や道具がはみ出し、下町の生活感や人間味のある街の表情になるでしょう。

 まちなみにおいての街の表情は一人の努力だけでは良くなっていきません。その街に住む人々が協調して、まちなみを良くしていこうと工夫する、それが街の表情として表れてきます。植木や花、または窓辺におく置物や飾りを自分たちに向けてではなく、すこし街を意識しておいてみてください。そんな些細で小さな工夫でも街の表情は豊かになっていくのです。