講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


3.プロジェクトの評価

・廃棄物量・投入資材量
新築と比べると廃棄物や投入資材量は激減します。今回の廃棄物の量は、約1.7トンで、新しく投入したものはできるだけ環境に害の少ないものを使っていて、これが約20トンです。住宅全体は、推定で250トンくらいなので、それを全部潰せば廃棄物量は200トンを越えたのが100分の1で済んでいます。投入資材は10分の1くらいですね。今あるものを壊すのをできるだけ先延ばしに、とことん使うのがいいのではないかという評価です。

・外断熱
室内温度、外気温、両方の壁の温度、断熱材の間の温度などを測って、外断熱がどれくらい効いたのかを評価しました。折角なら断熱材は2倍3倍にするべきだったなというのが反省です。パッシブクーリングといって、夏でも夜間気温が25度以下ならば、夜おおいに風を通してコンクリートを冷やし、昼間は窓をほとんど閉めてしまい外の風を入れない方法があります。これだと7月の中旬でも室内は外気より4、5度低い20度台に保たれ、扇風機をゆっくり回すと、弱い冷房効果になる。断熱材が厚ければ、効果をもっと期待できました。基本的には今も冷房なしで暮らしています。夏場に汗をかくのは当たり前でそのほうが健康だし、ぬるいお湯でも浴びたらそれでいいじゃないかという割りきりが、家族全員に合意されています。もちろん住宅として、暑さをしのげる場所が幾部屋かあるのが前提になっていると思います。

・太陽エネルギー利用と暮らし方の変化
太陽電池の発電量と消費電力は、だいたい消費1に対して発電が1.2になり、2割くらいは余らしています。実はこの裏には、せっかく24円という買うのと同じ単価で売れるのに、これは無駄にする手はないよという意識が強烈に働いています。大きく変わったのは、電化製品の待機電力を徹底的に潰していることです。ビデオの時計はなくてもいい余計なものだから使わない。タイマー予約もしない。どうしても予約したい時はその時に設定をやりなおす。ボタン一つでいつでもどこでもといった利便性はかなり捨てています。またテレビは液晶型に換えました。最近、冷蔵庫を省エネ型に買い換えたのですが、8月の電力消費量が2割も減りました。
自分がエネルギーの生産者になると、いわば発電所の所長になりますので、いかにそれを有効に使うか、無駄には絶対できないぞということが、だんだんおもしろくなってくる。そういう効果からも、なかなか自然エネルギーはおもしろいなと実感しました。最初はリスクの伴う原発などによる電力を使いたくないという意識から始めましたが、さらにおもしろくなって、節電が進んでという感じです。
お湯は年間使用量の50数パーセントが太陽熱です。お湯は売れないので節約しても余れば余ってしまうだけです。でもこれが実は面白い。
人工的にガスでお湯を沸かすなら、いつでも同じお湯が出ます。夜中に帰っても、お湯が出る。でも太陽熱だと午後4時ごろが最高温度で、後はだんだん冷めるわけです。そうすると早く帰ればシャワーを浴びられるけれど、夜中に帰ればもうお湯ないよ、お湯かかりたかったらガス使わなきゃいけないよとなり、もう少し自然のリズムと一緒に暮らそうかなという気分になる。少なくとも家にいる時は、早めにお風呂に入って、夜更かしをしない。そうすると電気も減る。 物理的には同じお湯ですが、これは太陽が沸かしてくれたお湯なのだという心があると、自然の恵みに対する感謝というようなものが付加価値として感じられます。その付加価値は他にも反映して、例えば、せっかく窓際には太陽の自然光があるのだから、ちょっとイスを動かしてそこで新聞読むとか。そういう気持ちの変化をものすごく促してくれる、二次的な効果がこの自然エネルギー利用にはあると思います。
物理的には同じお湯ですが、これは太陽が沸かしてくれたお湯なのだという心があると、自然の恵みに対する感謝というようなものが付加価値として付いてきます。その付加価値は他にも反映して、例えば、せっかく窓際には太陽の自然光があるのだから、ちょっとイスを動かしてそこで新聞読むとか。そういう気持ちの変化をものすごく促してくれる、2次的な効果がこの自然エネルギー利用にはあると思います。

・普通の家庭との比較
職場の仲間たちに月々の伝票を出してもらい、ガスと電気の使用量とライフスタイルをヒアリングしました。するとわが家はかなり少ない。炭素排出量にいたっては、一般の戸建て住宅の4分の1ぐらいのレベルになっています。住み始めて3年弱で大体リズムがつかめて、まだ成績がじわじわと上がっています。限界はくるはずですから、上がらなくなった時、次の設定をどうするかが課題です。

・居心地の良い住まいの3つの条件
住み手の立場で実感した少ないエネルギーで居心地の良い住まいの3つの条件は、パッシブな構えの建築と、適切な設備と、住まい方つまり住み手の意識。非常に単純化すれば、この3つそろうとエコハウス、エコライフが実現できるのではないかと思います。


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