講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


2.再生エコハウスプロジェクト

再生前の家は鉄筋コンクリートの箱型で、昭和47年頃に30歳の人が設計した当時のモダンな家です。北側は窓がほとんどなく、南側はかなり開口部が開いて、真ん中に中庭があります。すごく洋風かなと思いきや、和風の庭と数奇屋の茶室もあるという、和風の贅沢も併せ持った折衷型の住宅です。
この築27年の住宅を買って、環境共生住宅に蘇らせ、そこで環境に負荷をできるだけかけない生活を営んでみよう、というのが再生エコハウスプロジェクトです。私自身が発案者で、家のオーナーであり施主であり、それから菅家克子さんという女性建築家の共同設計者で、かつそこでの生活者、という条件になります。
我が家をエコ住宅に
「我が家をエコ住宅に―環境に配慮した住宅改修と暮らし」(学芸出版社、2002)

・発端・考えたこと
そもそもの背景・思いですが、地球環境が危ない、これをなんとかしなくてはいけない。そこで私は建築、住宅、生活で何ができるのかということを深く考えました。住宅の寿命が30年ぐらいといわれますが、もっと耐久性を高めないといけない。既存ストックを有効利用しなくてはいけない。
それから、省エネ。今はエネルギー会社に勤めていますけれども、エネルギーがこんな使えるわけがないという考えが常にあります。というのは、本当に炭酸ガス濃度、温室効果ガスの濃度を安定させるには地球全体の排出量を半分にしなければならないと言われています。全世界の一人の権利が平等とすると、既に平均の2倍を出している日本人は4分の1にしなくてはいけない。ですから省エネが必須です。極力、自然エネルギー利用を考えました。
もう一つは、都市に住むので、もっと緑を回復し土をきちんと取るということを重視しました。郊外といえども庭なし一戸建てが氾濫していますし、緑がドンドン減って地面が硬くなって、こんなこと本当にいいのかなと思うような状況に手を打ちたかった。

・長寿命化・建設廃棄物の削減
長寿命化させるために、まず躯体の診断を行いました。購入前に、傾いてないかと水準器をあて、致命的なクラックが入っていないかをチェックしました。壁が多いので、耐力が落ちていても、この壁量だったら大丈夫だろうと考えました。それから長持ちさせる工夫を行いました。垂れていたポーチの大庇に支柱をいれたり、一番痛みやすいパラペット部分を劣化しないように保護をしたりしています。
また、建設廃棄物の削減を考えて、取り外した材料をもう一度どこかで使うことに努めました。ガラス、アルミサッシュ、樋、フローリングといった使えるものはとことん再利用しました。例えば枠ごとはずした高さ2.4m、幅1.2m大きな一枚ガラスのサッシュをガラスの庇に転用しています。台所の外のサービスヤードに雨のかからないゴミ置き場がほしいけれども、庇をかけると暗くなるものですから、ガラスの庇にしようと。決して安くはなりませんけど、このように遊び半分で不用材の転用をあちこちでしています。

・断熱
外壁、天井、開口部などの断熱性向上を行いました。まず外壁をある程度整理しました。外壁がでこぼこしていますとラジエーターと同じで床面積あたりの表面積が大きいので、熱の出入りが激しい。これを防ぐためです。次に外断熱。特にコンクリート躯体の外側に断熱材を置くことで、コンクリートが外気温の影響を受けにくくなり、例えば冬は、輻射で壁肌が冷たいと窓に結露が発生するのですが、それを避けられます。
開口部の断熱はガラスを二重にしました。大部分は既存のサッシュをそのまま活かして、外側の断熱材の厚みがサッシュの見込みとほぼ同じところを利用して、そこに新しい普通のホームサッシュをつけて2重窓にしました。結露がひどかった痕跡がありますが、今は全然結露もしないし、よかったなと思います。

・自然エネルギーの利用
これは太陽熱で温水を沸かす、太陽光で電気をつくる、バイオマスつまり薪をエネルギー源にする、それから、自然換気を指します。
太陽熱の給湯設備は真空管式のコレクターで、太陽光発電はやや小さ目のシステムです。風突とよんでいる換気塔から、夏は中に溜まった熱い空気を出して、冬はダンパーで閉じています。


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