講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』



・脱家族化/脱施設化
 これからの家族論は、養護の対象となる子供たちが、安心して安全に安定的にいられる場所はどこなのか、ということがテーマになってくると思います。そうした子供たちは、家庭で育てられないので施設に入れられるわけですが、そこでは施設と家族という問題が出てきます。
この問題に関して、施設長たちは脱施設化ということを考えています。つまり、これまでの施設のあり方を根本から考え直さなければならないのです。施設の考え方は養育論をバックグラウンドにしていますが、現在の養育論ではまったく効果がないので、養育論の全面的な書き換えをやるしかないと彼らは考えているようです。
介護の問題も同様に、介護を受ける人が安心して、安全に安定的に自らの生をまっとうしていけるようにするためにどんなことができるのか考えなければなりません。ここでも、老人ホームなどさまざまな施設の根本的なあり方が問い直されています。
施設長たちの集まりを通して養護論と介護論の書き換えが僕たちの視野の中に入ってくると、子供とお年寄りが安心し安全に安定的に自分でいられる空間を生み出していくことが緊急の課題だと感じられるようになりました。そのことが僕自身を追い立てていて、もう一度家族論をやらなければならないと思うようになったのです。というのも、ここにいわば、基底の問題という意味では最後尾にあり、同時に虐待など時代減少と結びついているという意味では最先端にある問題が先鋭に露出していると直感したからです。
今までは、社会の大多数を構成する意識の中での差異を分析する形で、家族論を書いてきましたが、現在は施設を超えた施設像、家族を超えた家族像の追求が僕のテーマになっています。


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