・家族論を始めたきっかけ |
批評活動を開始して最初の約10年間は、主に近現代詩批評を行っていました。評論活動を開始してから数年後に結婚し子供が生まれましたが、自分が思い描いていた家族と現実の家族生活とのギャップに直面しました。それをきっかけに、夫婦や親子がよりよい関係を築き上げていくにはどうしたらよいか考える必要に駆られ、家族の問題についても考えるようになったのです。 |
1960年に安保闘争が起こりましたが、当時高校生だった僕は1年遅れで闘争に参加できませんでした。1965年に大学を卒業すると、今度は大学紛争が起こりましたが、前年に大学を卒業していたので、そこにも参加することが出来ませんでした。
|
今振り返ってみると、それら二つの紛争に参加できなかったことが、家族の問題に意識が向くようになった大きな理由だと思います。というのは、学生時代に安保闘争に全エネルギーを注ぎ込んだ人たちの中で、現在も表現活動を行っている人はほとんどいないからです。本気で闘争に打ち込んで傷ついてしまった人が、表現者として活動していくのはかなり難しいことだと思います。二つの紛争はそれほど過酷なものだったのです。 |
当時は非常に悔しい思いをしましたが、今振り返ってみると、そうした政治の季節に遭遇しなかったことがかえって幸いだったと思います。 |