講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』
築93年の駅舎でカフェを営む−久永屋(南阿蘇鉄道長陽駅)
久永操さん
南阿蘇鉄道長陽駅の管理駅長を兼ねながら、駅舎で「久永屋」を営む。カフェの営業は土日・祝日のみで、平日は看板メニューのシフォンケーキを老人ホーム・病院・幼稚園等に配達したりお取り寄せ注文に対応したりしている。




1. アメリカでのホームステイ
2. プログラマーとしての挫折
3. 南阿蘇へのJターン
4. 長陽駅舎の貸出申請
5. 訪問販売からの出発
6. 駅が繋ぐ絆
7. まとめ



1. アメリカでのホームステイ
松村:  後継者がいない建物が増える一方、新しい主が引き継ぐケースもあります。南阿蘇鉄道の長陽駅舎でシフォンケーキ・カフェを営む久永さんは、そうした方の一人です。佐賀県出身の久永さんは9年間ほどアメリカで学生生活を過ごしたそうですが、こうした経歴とカフェの開業は深い関係がありそうですね。
久永:  両親が英語教育に熱心だったこともあって、小学生の夏休みにホームステイしたんです。近所にアメリカ人と結婚した方がいらっしゃって、その伝手で母親と一緒に3週間ほどアメリカに滞在しました。大きなハンバーガーやスーパーマーケットなどにカルチャーショックを受けましたが、ホストファミリーにジョーという同い年の男の子がいたんですよ。すぐ意気投合しまして、野球をしたり彼の友達の家まで一緒に遊びに行ったりしました。英語が全くできないのに、連絡がつかないくらい遠くに出かけたりしたので、親にはものすごく心配をかけたりしました。
松村:  充実したホームステイだったようですね(笑い)。アメリカのどの辺りに行ったのですか?
久永:  オレゴンです。ホストファミリーのお父さんもすごく優しくて、夜は一緒にトランプをしてくれたりしました。ジェスチャーでやりくりしながら楽しく過ごしましたが、いざ帰国という時にそうした思いを全く伝えられなかった。本当は「一緒に野球ができて楽しかった」とか「一緒に飲んだドクターペッパーがとても不味かった」とか色々な思いを伝えたかったのに、「Thank you」としか言えなかった。その後悔があったので、中学生の時にもう一度ホームステイしたんです。今度は通じるつもりで行ったら、教科書英語と全く違うので歯が立たない。この時、日本で英語を学んでもダメだなと痛感しまして、アメリカ留学の思いが強くなりました。結局、進学した日本の高校は中退しまして、ジョーの家に寄宿しながらアメリカの高校に通いました。




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