講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


2.ガウディハウスとの出会い
豊田:  でも戻ってくると、日本らしい街並みは消える一方です。なぜ日本では歴史や景観に配慮した街づくりが行われないのか、モヤモヤした思いが募ってきた頃、尾道に空き家が増えてピンチという新聞記事を目にしました。実際、尾道を歩いてみると10件中1件は廃墟状態で、映画のロケに使われた歴史的なお屋敷も空き家になっていました。
いつかは尾道に帰るつもりになっていたので、海が見えるセカンドハウスを持てたらいいなと思って帰省のたびに空き家探しを始めました。当時は山手の傾斜地エリアに500件は空き家があったと思いますが、不動産屋が扱っていないんです。車が入れませんし、そもそもお寺からの借地だったりします。建物も戦前に建ったものなので、不動産的価値がないとみなされていた。尾道市は1995年から空き家バンクを始めていましたが、力を入れて取り組んでいる様子はありませんでした。
そういう状況だったので、自分で歩き回るしか方法はなかったんです。山手の傾斜地を探しまくって6年ほど経った頃、昭和8年(1933年)に建った「ガウディハウス」と呼ばれる物件を紹介してもらいました。海が見えないし小さいのでちょっと違うかなと思ったのですが、大家さんに会ってみるととても悩んでいました。80代のおばあちゃんでしたが、相続する跡取りはいない。人に貸すにしても、25年間ほど空き家だったので直すのに費用がかさむ。いっその事、解体しようとしたら500万円はかかると言われたそうです。だけど、3年間かけて建てられただけあって、面白い造りになっています。中を見せてもらったら気に入ってしまい、「私に管理させてください」と言って買い取りました。



前ページへ  1  2  3  4  5  6  7  8  9  次ページへ  


ライフスタイルとすまいTOP