講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


4.半農半X(島根県)
嵩 :  中高年向けの田舎暮らし専門誌を見ても、本の内容が変わってきています。働き方を含めたライフスタイルをみせる内容にシフトしています。地方に行って悠々自適に暮らしたいという方は相談者の中でも18%に過ぎません。むしろ、仕事が無いのであればそこで起業をするという「なりわい起こし」やあくせく働いたりせず農業をしながらほどほどの暮らしをしたいという「半農半X」という働き方を望む方が徐々に増えてきました。移住先の条件として一番目に挙がるのは「自然環境がいい」ですが、現在は「就労の場がある」という条件が二番目になっています。
鈴木:  「半農半X」という言葉はよくある言葉なのですか。
嵩 :  15年ほど前から使われています。これは、半分は農業しながら半分は別の働き方をするという暮らし方で、塩見直紀さんという方が提唱されました。島根県はこの言葉をキャッチフレーズに使って移住を応援していますが、県の農業政策の転換と関係しているところが興味深いですね。つまり、これまでは専業農家支援に取り組んできましたが、現在の島根県は兼業農家をつくろうと動いています。
似た言葉として「多業」というのもあります。いくつかの職業を組み合わせた働き方ですが、移住者の方でもリスク分散を考えています。こうした動向は移住希望者の裾野が広がった一つの証かと思います。当センターに相談に来られる方も、以前は「支援の厚い地域に行きたい」という方が目立ちましたが、今では「その地域ではどんな暮らしができますか」と聞く方が増えています。実際、島根県雲南市のように暮らしのイメージを伝える方向にシフトしている地域も現れています。
松村:  ものすごくクオリティが高いパンフレットですね。このようなパンフレットをつくっているのが移住者だと面白いですね。
嵩 :  このパンフレット制作に移住者が関わっているのかどうかは確認していませんが、震災後にまっさきに移住を始めたのはクリエイター系の方々ですね。



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