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松村: |
20世紀前半には「田園都市構想」に基づく住宅地が各国につくられました。かつて新しい街として脚光を浴びたそうした住宅地も、既に1世紀近くが経過し、もはや成熟した住宅地として各国に根付いています。今回はアメリカの「グリーンベルト」を例にとって、そうした住宅地のライフスタイルを支えるマネジメントのあり方をご紹介頂きます。
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森田: |
1930年代末にアメリカ連邦政府は不況対策としてニューディール政策を実施します。「グリーンベルト」はそうした政策の一環として開発された郊外住宅地の一つで、ワシントンDC郊外にあります。同時期にはグリーンベルトの他に、シンシナティ郊外の「グリーンヒルズ」とミルウォーキー郊外の「グリーンディル」も開発されました。これら三つは「グリーンベルトタウン」と呼ばれていて、荒廃した都市部を離れ田園の中に豊かな環境を作ることと、不況対策としての雇用創出を目的としていました。
グリーンベルトの開発は1935年に始まり、1937年には入居が始まります。当初は連邦政府が所有する社会住宅として1600戸のテラスハウスが開発されました。これが1952年に居住者が組織する住宅協同組合「グリーンベルトホームズ(Greenbelt Homes. Incorporated、以下GHI)」に払い下げられます。この払い下げから60年の間にGHIがどのような運営をしてきたのかを紹介します。つまりグリーンベルトは低層の集合住宅地なので個別の増改築が可能ですが、一方で全体としての居住環境の維持をどのように図ってきたかという内容です。見方を変えると、これは集合住宅をどう所有するかという問題になります。
グリーンベルトの最初の入居審査は申込み倍率が13.5倍に達していました。入居した住民はコミュニティに対して極めて意欲的で、様々な協同組合を立ち上げました。例えば生活協同組合をつくってスーパーを運営し始め、ガソリンスタンドやニューディールカフェなども運営していきます。グリーンベルトの居住者はこうした姿勢を「コープスピリッツ」と呼んでいます。ちなみに1997年には、町全体が歴史地区として指定されました。
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