講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


9.「管理」から「マネジメント」へ
西田:  グリーンベルトの周辺はどのようになっていますか。
森田:  GHIの周辺では、払い下げ直後から新しい住宅地の開発が進みました。今ではおよそ1万世帯規模の市になっています。ところで、GHI事務所の最初のトップには、社会住宅時代に国から派遣されていたマネージャーをそのまま置いています。
鈴木:  やはり、これだけの規模の住宅地をマネジメントする専門家集団が豊富にいるということが、町にとって大きな財産なのでしょうね。
松村:  日本では長く建っている建物を管理するという概念がなかったのではないですかね。もっとも、ひょっとすると、日本でも団地サービス(現:日本総合住生活)のスタッフ数と公団住宅管理物件の割合は、案外グリーンベルトと似たような割合だったのかもしれません。住み込みの管理人もいたことですし。また最近URは団地マネージャー制度というものを作りました。団地ごとに団地マネージャーという管理者を置いて、それぞれ違う経営方針でやってよいという制度です。これが本格化していくと、もしかしたらグリーンベルトのようなマネジメントが日本にも現れるのかもしれません。
鈴木:  かつての農家や商家には、管理の概念はあったんじゃないですか。近代に入ってそうした建物が活用されなくなったということはあるかも知れませんが。
松村:  いずれにしても、これまでの日本住宅地に経営という感覚がなかったことは間違いないでしょうね。例えば英語の「マネジメント」は、日本では長い間「管理」と訳されてきましたけど、アメリカの住宅地マネジメントの実態に照らし合わせると大きな違和感を覚えます。ダイナミックな動的なニュアンスがなくなってしまって、静的な現状維持という内容に縮こまってしまう。日本の不動産管理業そのものを時代に合わせなくてはいけない時期に来たんだと思います。



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