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鈴木: |
駒井さんは「借家生活」をコンセプトに、分解・増築できる巨大な家具的木製フレームを持って引っ越しを繰り返しています。現在の住まいの1階がアトリエですが、地域に開いた多目的スペースにもなっています。まずはこのようなユニークなライフスタイルを始めたきっかけからお願いします。
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駒井: |
大学生の時に京都で下宿生活を始めました。その時からアパートのクローゼットを改造したり、マンションのベランダにお湯の出るシャワーユニットを作ったりしていたんです。出て行くときは大家さんに怒られて、保証金以上のお金を取られることが続いていました。
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鈴木: |
駒井さんの独特な借家生活は筋金入りだったんですね。
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駒井: |
卒業後は設計事務所に勤めましたが、わざわざ建築家に設計を依頼するような限られたクライアント相手の仕事に疑問を感じるようになって、5年目で辞めました。その時は他の仕事をしようと思ったんですが、建築の世界にやるべきことが一杯あると思い直してその2年後に設計事務所を始めました。
設計者として独立したからには、自分のやっていることをはっきりと世の中に示すことが必要と考えて、学生の頃から続けていた借家の改造を1998年のSDレビューに発表しました。建築家のデビュー作の多くは自邸の新築ですが、僕は借家での生活をまとめて出したわけです。それが入選しまして、不動産屋が物件紹介するように自分たちの借家のガイドブックを並べた展覧会を代官山のヒルサイドテラスで開くこともできました。
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松村: |
その時はもう結婚されていたんですか?
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駒井: |
しかも子供が生まれるかどうかという時でした。当時は仕事もせず失業保険と子供の出産祝いで生活していました。実家の泉佐野では子供が生まれた時や子供が歩いた時のお祝いがすごいんですよ。子供にまつわる出来事を知らせるため、生まれた時には原寸大の年賀状を作ってみたり、パラパラ漫画で子供が歩く年賀状を作ったりしましたし、妻が妊娠しているときの年賀状は、紙風船を膨らますとプーッとお腹が膨らんでいく仕掛けにしました。言わばうちの稼ぎ頭は子供たちなんです(笑い)。
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