講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


2.増殖する借家インフィル
松村:  展覧会を行った時には、こうした家具を持って借家住まいをされていたわけですね。
駒井:  大がかりになったのは二人目が生まれてからです。引っ越した2階建ての借家に風呂がなく大人数が集まれるスペースもないので、居間と一体的に使えるデッキを庭に設け、ブランコやプールなどの遊具を置けるようにしたんです。金物を使わずにプレカット材の柱梁フレームも組み立てました。知り合いの工務店の倉庫に眠っていた洗い場付浴槽も譲り受けて露天風呂にしました。すだれとカーテンで仕切れば夏は行水気分の入浴です。冬には梱包用のプチプチシートで浴室全体を包み込んで保温する仕掛けです。
鈴木:  ここには2002年に引っ越してきたんですよね。
駒井:  現在の家はもともと建具屋さんの倉庫でした。使わなくなったので、階段と2階の天井を付け加えて賃貸に出したそうです。でも退去時の原状復帰の約束をして、階段の位置を変えて2階天井も剥がしました。階段は窓に面していましたが、貴重な採光ですからダイニングスペースにしたかった。天井を剥がしたのは広々と使いたかったからですが、おあつらえ向きにロフトが出てきました。こうした空間にフレームキットを挿入しまして、住居、事務所、作業場、ギャラリーを混在させる仕掛けにしました。
松村:  眠る場所はどこになりますか?
駒井:  2階に布団6枚を敷いて寝ています。寝る場所には1から3番まで番号が付いていてそれぞれ表と裏があります。毎週入れ替えがあって、裏が当たると人の足下に入らないといけない。これは僕も平等です(笑い)。
松村:  色々と生活ルールがあるようですね。誰が決めているんですか?
駒井:  長女と家内です。長女はこういうことの仕切りが好きなんですよ。「阿弥陀くじで決めよう」と言ったそばからくじを作ったりします。生まれながらの生徒会役員です。
松村:  こうした生活が子供のいる家庭で成立しているのが驚きですね。東京のコンバージョンなどを見に行くとせいぜい夫婦二人ですし、両方ともアーティストだったりしますから。
駒井:  むしろ子供が増えたからこういう生活になって行ったんです。子供が増えてどんどん大きくなっていくから、設えを変えるし引っ越しもする。そうすると今度は部屋が欲しいとか言い始めるし、子供の持ち物もどんどん増える。子供が生まれて引っ越すたびに、巨大家具のパーツが増えていったんです。夫婦二人だったら可変性とか考えることはなかったと思います。



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