講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


6.社交の場としての星名家
松村:  こういう所で暮らすと訪ねてくる人も多いと思いますが…。
星名:  多いですね。工房の方に住んでいた時もそうでした。楽しいのですが仕事との両立が大変です。日中に作業をするのはまず無理でした(笑い)。今ともなれば妻も居ますので、妻を訪ねてくる方を含めて倍増です。例えば午前中には近所のお母さんが「どうしてる?」って様子を見に来てくれたりします。あと草木染めの始めたての頃からのお客さんですが、いつも友達のようにふらっと遊びに来ます。例えば朝10時前くらいに来てお昼頃までお茶をしていく。その方は車で40分くらいかけてやって来て、毎回のように「ここでカフェやらないか」と私に参考になりそうないろいろ情報を持ってきてくれます。
松村:  面白い。日中ほとんどそんな感じですか。
星名:  毎日というわけではないのですが、その他にも集落の人やお客様、そのどちらでもないけど知り合って仲良くしている方など、色々な方々が寄ってくれます。差し入れやお裾分けもたくさんいただきます。お一人ずつはそれほど頻繁でなくても、そうした方が十数人はいるかと。

あと結婚してから少し減りましたが友達関係はたいてい夜来ていました。仕事中だよと言っても「いいよ、気にせずやってて」と本を読んでいたりします。でも時々は「それでさぁ、星名さんさぁ」と話しかけてきますから、やはり仕事は進まない(笑い)。
西田:  それじゃ毎日じゃない。アポイントメントを取って来るのですか。
星名:  取らない人がほとんどで、いなかったらそのまま帰っていく。もちろん普通のお客さんもいらっしゃいます。最初のイベントを新聞が取り上げて下さったおかげで、たくさんのお客さんと知り合えました。その直後の1〜2ヶ月間は来客対応に追われてしまって、注文を頂いても仕事の時間が取れませんでした。
松村:  先日お子さんが生れたんですよね。ここを子育ての場にするんでしょうか。
星名:  越前浜で育てるつもりです。ここは新潟の中では温かいところで雪もほとんど降らない。何より妻はこの家が気に入っていて、私も不満はありません。ただ借家ですから、違う家に引っ越す可能性はあります。この家を購入できるかもしれませんが、他の民家を借りることになるかもしれませんし、土地を買って建てるかもしれません。
松村:  とにかくこの地域に住もうということですね。ちなみに奥さんの出身はどちらですか。
星名:  新潟県の村上市です。30年ほど前にできた新興住宅地で育って、愛知の高校、東京の短大を出てからオーストラリアにしばらく行って、新潟に帰ってきました。
松村:  そういう育ちの奥さんはこの家のどこが気に入ったのでしょうか。
星名:  ここにいると生きているって気がすると言ってました。今まであまりにも快適な環境の中にいたので、ここは彼女にとってサバイバルのような感じらしいです。実際、本当に寒いですし、自分で工夫しないと勝手に冷い空気が入ってくる。
松村:  リアルなのですね。ご自身はどうですか。
星名:  私もそう思います。アパートに住んでいる時はふわふわしている感じでした。根無し草みたいな感じです。もともと農家で育ったので、ここは自分の感覚と合っています。朝早く起きた時も5、6種の鳥のさえずりが聞こえてきますし、季節ごとに色々な庭の表情が感じられます。



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