講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


2.独立、そして空き物件ブログの開設
馬場:  独立して何をやろうかと模索していたとき、確か2002年でしたが、佐藤さんとお会いしました。松村先生や佐藤さんが書かれた本を参考にして、ニューヨークやシカゴに突撃取材に行って、そこで「コンバージョン」を初めて知ったんです。その時、日本で取り組んでいる人もいないことだし、これはおもしろいなと思ったんです。

帰国してまず考えたことは、小さくてもいいから事例を作らなきゃいけないということでした。また、ポテンシャルビルというか、分かりやすいエリアを発見しなきゃいけないとも思いました。例えば、シカゴでは、あの辺がコンバージョン・エリア、という地域あるんですね。

東京で同じような文脈はどこだろうと探していたときに、この辺の神田から東日本橋かけてのエリアを発見したんです。2003年のことでしたが、よく見ると空きビルだらけで、これはめちゃくちゃおもしろいぞと。そこで、とりあえず引っ越そうと思い立ってこの建物を見つけました。
鈴木:  そのときはオフィスとして使うつもりだったんですか?それとも住居として?
馬場:  住んでもいいし、オフィスにしてもいいという契約でした。60uもあるのに家賃は10万だったので何も考えずに借りましたね(笑)。その場で「借ります!」と言って借りて、改装していきました。もっとも、開業するまでは結構苦労しました。やはり素人だけで改装するのは難しいんです。

それでここに住み始めて、その苦労話とか、この辺に空き物件がいっぱいあったので、「空き物件から見る東京」という考現学みたいなブログを出したら話題になって、それが東京R不動産の原型になりました。でも、最初はあくまで趣味として空き物件をおもしろく紹介するというサイトだったんです。
松村:  ブログを始めたときは、それが商売になるかどうかは考えていなかったんですか?
馬場:  考えずにやっていました。雑誌も作っていたのですが、お金もかかるし、ちょうどカーサブルータスとかが刊行されて全然売れなくなって、これはもう小さな規模や資本で既存のフォーマットの雑誌を作り続ける時代ではないような気がしていました。ですから、新しいメディアに取り組んでみようというくらいの気持ちでした。
鈴木:  最初は物件を勝手に紹介していたんでしたっけ?
馬場:  勝手に紹介していました。そうしたら、お前ちゃんと仕事にしなきゃいけないだろ、みたいなことを言ってくれる人がいて…。
松村:  そのときはどうやって食っていたの?
馬場:  内装の設計や空間の企画などをやって、なんとかなっていました。その頃は僕もまだ1人だったし、まぁなんとでも、という気持ちでいたんです。ゆっくり設計をしようかなと思っていたのですが、こういう経歴で普通の設計をしていてもなぁとも思っていました。それでこのWebサイトがちょっとずつ話題になって、そのおかげで仕事も入ってくるようになりました。



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