講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


4.住宅の機能と空間の対応

松村 ライフスタイルに関わりなく、「玄関は2つ」なのですか?
鈴木 個人を束ねるときに「2つ」が関係していると思いますが。
松村 それは普遍的に求められたことですか?
小泉
普遍的に考えていました。それぞれのライフスタイルに対応したプランが求められています。 今まではライフスタイルに制度で枠をはめていたという側面がありますが、現在では多様になってきています。 その多様さにきちんと対応したオールマイティの住宅を作るのは難しいでしょう。
しかし、数十人という規模だったら似たライフスタイルをもった人たちはいるのではないか。 住宅とライフスタイルが1対1対応していなくても、数十人単位で対応する住宅ならば成立すると考えています。 また、似たライフスタイルを許容する住宅というものがアダプタビリティのある住宅だと言えます。

松村 以前、雑誌の取材で「先生のライフスタイルはなんですか?」と聞かれたことがありましたが、うまく答えられませんでした。 自分のことから考えてみると、ライフスタイルと住宅などの商品が密接な対応関係を持つ必要性に疑問を感じます。

鈴木 仕事などで外での生活がある人は自らのライフスタイルを語れないかもしれませんが、住宅の中で長い時間を過ごすようになるとそれが問題になってくると思います。

小泉 人間には適応能力があるので、実際はどんなマンションでも適応してしまって、現在の生活に特に問題を感じていない人も多いのかもしれません。 しかし、別の住居に住んでみて初めて発見することがあるのではないでしょうか。
住宅を生産のための場ととらえて、機能的に解くことだってできます。 例えば、具体的に外から帰ってきて次に何をするかという風に考えていくと、不具合が見えてくると言う部分もあるでしょう。

松村 ライフスタイルと建築の関係を考えると、外との関係性がないと設計できないのでしょうか?
小泉 確かに関係性を考えずに設計する考え方もあります。建築の設計を純粋にモノの論理で組み立てていくというスタンスですが、私は異なります。 一見関係性が問われていないようでも、丁寧に状況を読み解くと設計のきっかけ、デザインの手がかりが見つかります。 モノの論理を勝たせて教条主義的にスペースを設けるのではなく、そのスペースがどのように使われるかということが私にとっては大切なのです。


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