ライフスタイル考現行


エリアマネジメント・モデルとしてのリノベーション−三草二木西圓寺と三草二木行善寺

0.はじめに

石川県の社会福祉法人・佛子園は、『シェア金沢』に代表されるような特徴的な福祉施設づくりに取り組んでいます。そうした福祉施設づくりのモデルとなったのが、『三草二木西圓寺』という廃寺の再生プロジェクトです。

安倍真紀さん
岩手県出身。日本女子体育大学卒業。横浜市の障害者施設で相談員をしていたが、佛子園に魅せられて平成18年入職。平成27年4月より 三草二木西圓寺 施設長。

岸本貴之さん
福井県越前市出身。金沢大学理学部卒業。大学時代の経験から人と関わる仕事に就きたいと平成16年入職。鬍鬍張露肉飯、三草二木西圓寺、美川37Caféの立ち上げに参画。平成27年4月より三草二木行善寺チーフ。



1.三草二木西圓寺−廃寺を再生した福祉施設
2.就労支援とワークシェア
3.地域コミュニティ施設として
4.三草二木西圓寺から始まる街おこし
5.三草二木行善寺−B’s(ビーズ)プロジェクト
6.地域との連携拠点として
7.脱福祉施設に向けて



1.三草二木西圓寺−廃寺を再生した福祉施設
松村:  小松市野田町の「三草二木西圓寺」は、基本的に福祉関連の複合施設です。しかし、こうした分類に収まらないユニークな内容を持っています。どのようにしてこのプロジェクトが始まったのでしょうか。


安倍:  2008年1月にオープンした「三草二木西圓寺」は、「西圓寺」というお寺でした。約540年前に浄土真宗の直参道場として建てられたのが始まりです。最初は加賀藩の安宅の浦にありましたが、200〜300年ほど前にこの土地に移築されました。ところが、最後の住職は、物はそのままにしておくという考え方だったそうで、近所の子供たちからは、お化け屋敷と言われるくらいの荒れ寺になっていました。

住職は2005年にお亡くなりになりました。跡継ぎも決まらず、檀家さんや町内役員が協議して廃寺にすることが決まりました。残された土地・建物は更地にして駐車場にすることが決まりかけましたが、ご縁があって雄谷理事長が相談を受けることになりました。「200〜300年も続いたお寺だし、このまま潰したらご先祖様に合わせる顔もない」という声もありました。

同じ頃、佛子園では本部近くに、障害児の自活訓練ホームを作ろうとしていましたが、地元から反対を受けました。私たちはこの経験から、福祉が地域で日常的にならないといけないと考え始めたところだったんです。そこで雄谷理事長が、佛子園がお手伝いする条件として、「障害者の参画」と「地域の協力」という二つの条件を提示したところ了解が得られ、廃寺となった土地・建物をコミュニティ施設として再生することになりました。

ちなみに「三草二木」というのは経典にある言葉で、薬草には様々なものがあるといった文脈で出てきます。つまりこの名称には、認知症の方とか、障害のある方とか、地域の方とか、色々な人が持ち味を発揮しながらお互いが支え合い地域貢献していける場所にしたいという思いが込められています。



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