成熟研委員:このハンドブックを拝読して、最も気になった点が、根岸様も「設計に関わる者として気になる」と述べられていた、住戸出入口を開き戸にしていることです。玄関扉を引き戸にすると病院みたいなイメージになるとか、生活安全の不安といったことがあり、自立型高齢者住宅では、住戸内のトイレなどは引き戸にしても、住戸出入口は開き戸にしています。しかし開き戸では、単身の車椅子利用者が扉を開けて、通って、閉じて、鍵をかけるという一連の動作が自力でできるのかという問題があります。「自立して単身で生活することができる住宅」がこのハンドブックの基本的考え方とのことですが、そうであれば、住戸出入口に必要な装備などを示すべきではないでしょうか。
根岸氏:その件を私は検討会で質問しました。防火性能から玄関出入口は開き戸となりますが、賃貸住宅では扉にストッパーがつかず、手を離すと扉が自然と閉まってくるなど、車椅子利用者が自力で扉開閉や施錠を行う上での困難があります。検討会での回答は、当事者ヒアリングで、1名の方が玄関開き戸で生活可能と言われているから、本ハンドブックでは車椅子操作や移乗に介助の必要ない人を想定して、住戸出入には介助者想定の開き戸とのことでした。単身車椅子利用者の住戸出入について必要な検討がなされておらず、問題を孕んだハンドブックと考えられます。
成熟研委員:本ハンドブックの対象は賃貸共同住宅で、戸建て住宅の参考ならない部分もあるとのことでしたが、どのような部分でしょうか。
根岸氏:戸建ての注文住宅では、トイレで便器への側方アプローチのためのスペースをつくるといった、自由度が高くなります。本ハンドブックは、25m²程度の住戸において車椅子利用者が自立生活できることを基本レベルとしており、戸建て住宅設計者がこのハンドブックを見て、この寸法のトイレで車椅子利用者でも使えるとならないといいなと考えています。
成熟研委員:この検討会は、もともと障害者設計ガイドラインの検討会としてはじまり。ハンドブックがまとめられました。ハンドブックであり、ガイドラインではないということに何か意図はありますか。
国土交通省安心居住推進課:
今、根岸様から説明のあったように、本ハンドブックがバリアフリーの全てではありません。住戸広さの制約に対して、こういうやり方があるということを設計に関わる方々に知っていただきたいということでまとめたハンドブックです。
以上