「障害者の居住にも対応した住宅の設計ハンドブック」の解説
(2) 専用部の設計
1) 段差
次に掲げるものを除き、段差がないことと定めています。
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5mm以下の段差。
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玄関の出入口で、“くつずり”と玄関外側の高低差は、雨風を防ぐことがあり、20mm以下。かつ“くつずり”と玄関土間の高低差5mm以下。当事者から20mmなら大丈夫との意見がありました。限りなくゼロにして欲しいとの意見もありましたが、最終的に本ハンドブックでは20mm以下となりました。
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浴室の出入口で、単純段差 (またぐ必要がない段差) かつ高低差20mm以下。浴室の出入口にグレーチングを設けることで段差を設けない設計とした事例や、浴室内に簀の子を設けることで段差を解消した事例も載せています。
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バルコニーの出入口で、単純段差。
視覚障害のある方々には、5mm以下の僅かな段差のある方が自分の位置が分かりやすいということがあるとのことです。
2) 通路及び出入口
通路の有効幅員は、真っ直ぐの通路で780mm以上。直角路では、一方の通路の有効幅員が800mm以上の場合、他方の通路の有効幅員850mm以上とすることとしています。有効幅員は手すりの部分を含めないもので、手すりをつける場合は、その寸法を加えることが必要です。
出入口の有効幅員は780mm以上 (トイレ及び浴室出入口の有効幅員は700mm以上) としています。出入口の有効幅員は戸の枠や厚み、引き残しを除き、必要な寸法を確保することとしています。また出入口の有効幅員は、戸があらかじめ開いている状態で通過するために必要な寸法としています。
出入口に至る経路が直角となる場合では、出入口付近の通路の有効幅員が780mm以上では出入口の有効幅員850mm以上、出入口付近の通路の有効幅員が800mm以上では出入口の有効幅員800mm以上としています。ただし、出入口の前に車椅子の転回ができるスペースがある等の場合は、出入口の有効幅員780mm以上 (トイレ及び浴室の出入口の有効幅員は700mm以上) とすることが可能としています。
基本レベルの水準では対応が難しい場合等の個別の配慮事項として、直角路では、車椅子使用者の移動を容易にするため、出隅の面取りを行うことも有効としています。また、基本レベルで想定する車椅子サイズよりも大きい車椅子の場合に必要となる寸法の事例を載せています。
車椅子使用者以外の障害者に対する配慮事項としては、視覚障害者の移動や靴の着脱に配慮し、壁面からの突出物を極力避けるとともに、突出物を設ける場合は、面取りをする、保護材を設ける等、衝突時の危険防止に配慮することが望ましいとしています。
このハンドブックでは、住戸出入口が開き戸になっており、引き戸にすることは示されていません。設計に関わる者として気になるところであります。
3) トイレ
トイレの利用は、毎日の生活でとても重要です。
前記のように、トイレの出入口の有効幅員は700mm以上とすることを水準としています。さらに、入居者のニーズに応じて手すりを後付けで設置できるよう、壁面内部の下地に安全な強度を確保しておくことや、補強できるような仕様としておくことを示しています。
介護などでは便器に側方アプローチとする設計の考え方がありますが、本ハンドブックでは正面アプローチと直角アプローチの両方での寸法を示しています。正面アプローチの場合、短辺は内法寸法で800mm以上、長辺は内法寸法で便器前500mm以上とすること、直角アプローチの場合、短辺は内法寸法で800mm以上、長辺は内法寸法で便器前600mm以上とすることとしています。直角アプローチでは、便器移乗に介助を行う場合の介助者が立つ位置を、自力移乗と同じ寸法で確保できます。
便器への側方アプローチの介助が必要な場合は、個別の配慮事項として、便器横600mm以上、便器前800mm以上が必要と示しています。さらに、脱衣所(洗面)とトイレを一体の空間として計画することで、スペースを確保する事例を示しています。
車椅子使用者以外の障害者に対する配慮事項としては、設備機器について、視覚障害者や聴覚障害者も円滑に操作できるよう、操作方法、作動状況が触覚・聴覚・視覚等によって分かりやすいものとすることとしています。
4) 浴室
浴室出入口については前記の通りです。浴室広さは、内法寸法で短辺1,300mm以上×長辺1,700mm以上とすること、浴槽の深さは500mm程度、エプロン高さは400〜450mm (車椅子の座面の高さ) 程度とすることを寸法の水準と示しています。そして入居者のニーズに応じて手すりを後付けで設置できるよう、壁面内部の下地に安全な強度を確保しておくことや、補強できるような仕様としておくこととしています。
さらに、浴槽は濡れても滑りにくく、体を傷つけにくい材料で仕上げること、洗い場の水栓金具やシャワーヘッド掛けの取り付け高さは、入浴用椅子等から手が届く位置とすることを示しています。
車椅子使用者以外の障害者に対する配慮事項としては、トイレと同じです。
5) 脱衣所 (洗面)
脱衣所出入口については前記の通りです。さらに車椅子からシャワーキャリー等に乗り換えることを考慮した空間とすることと、洗面器下部に車椅子使用者の膝が入るよう、洗面器下部のスペース (高さ) を確保することが記されています。
車椅子使用者以外の障害者に対する配慮事項はトイレ・浴室と同じです。
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