「障害者の居住にも対応した住宅の設計ハンドブック」の解説
(3) 共用部の設計
1) 共用廊下と建物出入口
共用廊下の水準として、各住戸から、エレベーター等を経て、建物出入口まで、有効幅員1,200mm以上の共用廊下を経由して到達できるものとすることと、50m以内ごとに、車椅子の転回・すれ違いができる、1,400mm×1,400mmのスペース (エレベーターホール等を算入することも可) を設けることが示されています。
各住戸から、エレベーター等を経て、屋外に通じる建物出入口までの経路に高低差が生じる場合にあっては、次に掲げるいずれかの要件を満たすことが示されています。
①
高低差が160mm以下で勾配が1/8以下の傾斜路若しくは勾配が1/12以下の傾斜路を設け、かつ、その有効幅員を1,200mm以上 (階段に併設するものは900mm以上) とすること。また、始点及び終点に、車椅子が安全に停止することができる平坦な部分 (1,500mm×1,500mm以上) を設け、高低差750mm以内ごとに1,500mm以上の踏面を設けること。
②
車椅子使用者の昇降に資する段差解消機などの設備を設置すること。また、当該段差解消機は、車椅子使用者が自身で操作できるものとすること。
建物出入口の水準として、有効幅員は800mm以上とすること、主要な経路上の建物出入口に戸を設ける場合には、自動的に開閉する構造その他の車椅子使用者が容易に開閉して通過できる構造とし、かつ、その前後に高低差がないものとすること、主要な経路上の建物出入口に戸を設ける場合には、その前後に車椅子使用者が開閉動作等をできるスペースを設けることが示されています。
車椅子使用者以外の障害者に対する配慮事項としては、オートロック操作盤や郵便受け、宅配ボックス等の設備類は、視覚障害者や聴覚障害者も円滑に操作できるよう、操作方法、作動状況が触覚・聴覚・視覚等によって分かりやすいものとすることが示されています。
2) その他の単位空間
エレベーターのかごは、車椅子使用者が利用できる構造として、さらに全長の長い車椅子の使用者に配慮した奥行きとすることがより望ましいとしています。スイッチ類は、設置高さに配慮したものとすることとしています。特に非常時における視覚障害者、聴覚障害者の情報伝達手段を確保するためには、出入口にガラス窓を設ける、視覚・聴覚等で情報を伝達可能な交信設備を設けるなどが有効としています。
階段は、視覚障害者が容易に識別できるよう、段鼻とその周囲の部分 (踏面等) との色の明度、色相又は彩度の差を大きくすることとしています。聴覚障害者の曲がり角での衝突を避けるため、鏡の設置や見通しの確保について工夫することとしています。
屋外に通じる建物出入口は、車椅子使用者郵便受けや、オートロック操作盤・宅配ボックス等の設備類は、車椅子使用者が円滑に操作できるよう、設置高さに配慮することとしています。
外構は、駐車場から建物出入口までの経路、宅配ボックスやごみ置き場までの経路についても、車椅子でアクセスできるようにするとしています。そしてグレーチング等により、視覚障害者が触覚的にも分かるように工夫することがより望ましいとしています。
これらに加え、地域特性 (例えば、豪雪地帯における積雪時の外出経路) や、災害時の避難経路等についても考慮する必要があります。
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