『ごちゃまぜ』をめざして、
地域で経済が循環するまちづくりの可能性

-超少子高齢化、人口・世帯減少、プレAI期における後退戦への臨み方-

 

【質疑応答・意見交換】

成熟研委員:地域善隣事業はかなりローカルな言葉ってイメージがありましたが、これから全国的に広げていこうというお考えですか?
園田教授:全国で15の自治体がもうすでに展開していてドキュメント映画もできています。
成熟研委員: NPOの生活支援も大事ですが、無料低額医療というのも重要になってきていて、そういう活動をされている方々と取り込むことも大事になるかと思います。
成熟研委員:郊外住宅地の再投資における、リターンのイメージがよくわからないです。経済的に言うと不動産が高く売れることがリターンなのでしょうが、時間軸で考えると人それぞれ事情があります。
園田教授:私が関わった事例ですが、築50年の物件は不動産市場では通常アウトです。ところがリノベーションの初期投資300万円くらいで、8万3千円くらいの賃料が月々はいってきます。退出者がたくさん発生した団地は建替えが難しいのですが、管理組合とは別組織で、空き家をリノベーションして賃貸物件にするとリターンがあります。そこまで広げて考えると、いろんなリターンがあります。それは1戸ずつによって違うと思います。
成熟研委員:パッケージをつくりこめば実現可能でしょうか。
園田教授:そうです。
成熟研委員:地域の住民が自分たちの住む地域を活性化するために地域事業会社に投資するような地域住民にどれくらいいるのかなって考えます。簡単にお金が稼げるものにはみなさん積極的になるのですが、地道なことに投資する人が団塊世代を中心とする高齢者にそれほどいるのでしょうか。
園田教授:その団地を開発したディベロッパーやハウスメーカーといった、世界に冠たる日本の大企業が、地域の皆さんの資産を劣化させないためにもう1回1緒にやりましょう、利回り何パーセントですと提示すれば、大きな安心感がありますよね。
成熟研委員:住宅会社の仕事の範疇になるのでしょうか?
園田教授:そうです。マンション管理会社と同じリターンはあるわけです。
吉田座長:福岡県でも、福岡県の教育庁におられ、長崎大学の先生もやっておられた方が代表になって、3階建てで古いアパートをリノベーションされている例があります。
園田教授:行くところまで行ってみると、そういう侍が現れるのですね。一旦、どっかにストンとはまると、ものすごいスピードで進みます。
成熟研委員:循環型のまちづくりとか、誰がそれやるのかという担い手の話になると、佛子園の話でも「結局できたのはこの人がいたからだよね」で議論が終わってしまう気がします。誰がやるのかって結構人づくりで、一般解みたいなものはないのですが、私も考えながら仕事をしていますので、本日は参考になりました。
成熟研委員:建築といった話だけでなくて、税制の方で、相続税を払うよりも地域事業会社の方に再投資という選択肢があれば面白いなと思いながら、お話をうかがいました。新築ばかりが住宅会社の使命ではないと思うので、地域資源をどう次の世代に引き継いでいくかを、社会全体で取り組まないとまさにお金が出てこないかなと考えています。
園田教授:短期利益という近視眼的なものの見方をすれば却下になるお話かもしれません。誰かが最初にリスク取らなきゃいけないから取りましょうっていう時に、日本のエスタブリッシュされたところがどう行動するかですね。
成熟研委員:ただ同然で空き家を買ったら、リスクは小さくて、何かができるように思いますね。
園田教授:しかし日本では欧米と違ってなかなか安くならないのですね。固定資産税は、売買取引がある前提で評価され、土地価格が坪10 万円を割ると自治体経営が成り立たなくなります。けれども、おっしゃるように、今からの若い人はただ同然で手にいれることを狙っていると思います。
成熟研委員:生活支援というものを住宅会社がどこまで引き受けて、どのように生かすのかについて、もう少し具体的な意見を伺いたいと思います。
園田教授:20世紀の日本には、実は福祉のプロも生活支援のプロも少なくて、2000年前後に福祉系の大学がたくさん増えたときに、現場でやってこられた方々が先生として採用されました。そうした方々がリタイアの時期になっています。この間、福祉分野の理論はできたけれど経験値が積みあがっていないことが今の日本の現状だと思います。そこを突破する必要があります。


以上