2) Age-Friendly Housing
- Age-Friendly Cities and Communities (AFCC) とはWHOが提唱している、年齢によらず健康で活動的に暮らすことが可能な環境を提供する都市・コミュニティです。構成要素は、①屋外空間と建物、②交通機関、③住宅、④社会参加、⑤尊重と社会的包摂、⑥市民参加と雇用、⑦コミュニケーションと情報、⑧地域社会の支援と保健サービスの8つです。
- WHOは“Recommendations of the WHO Housing and health guidelines”で、室温18℃以上に保つことを強く推奨しています。日本においても慶応大学伊香賀先生が、住まいの断熱改修後に居住者の起床時の最高血圧が有意に低下するとの研究発表をしておられます。住宅を如何にデザインするかが、健康寿命に大きな影響を及ぼすということが分かっています。
- Age-Friendly Housingとは、高齢者のニーズに対応し、高齢になっても自立して快適に暮らせるように設計された住宅環境であり、高齢者が可能な限り長く自宅や地域社会で暮らせるようにすることを目指すものです。
- Age-Friendly Housingには3つのモデルがあります。
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- Cohousing:居住者のための分譲/賃貸の部屋と活動を行う共用スペースで構成。多世代型と高齢者向けの2種類ある。コンセンサスに基づく意思決定によって運営され、一部の場合では非営利団体が所有・管理する。
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- Naturally Occurring Retirement Community Supportive Services Programs (NORC-SSPs):住民の大半が高齢者となった地域。コーディネーターが住民のニーズを把握し、該当する地域の社会・レクリエーションサービスへのアクセスを支援。政府からの支出、助成金、会員費によって運営される。
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- Village:地域の高齢者による自主運営の会員制組織。高齢者自身が活動やサービスの提供を行う。社会的および教育的活動、交通手段、家のメンテナンス、医療への紹介など、有給スタッフやボランティアによってサービスが提供される。
- Age-Friendly Housingの要件・指標は、①手頃な価格、②住宅コスト、③.サービスへのアクセス、④安全性とセキュリティ、⑤必須サービス、⑥設計、⑦アクセシビリティのための改修、⑧メンテナンス (清掃・管理・点検) の8つです。
- アメリカには、Age-Friendly Housingの指標に基づく各Nursing Home評価を、サイト上に見える化の実例があります。
(4) 自然と健康になる高齢者向け住宅を目指して
- 本日は、ゼロ次予防と、高齢者の社会参加を促進するアプローチの重要性、高齢者向け住宅におけるゼロ次予防はAge-Friendly Housingの実装ということをお話しさせていただきました。
- これからの研究の発展としては、日本版Age-Friendly Housingの基準策定を考えています。高齢者向け住宅での調査データをつかって、基準の妥当性を検証し、その上で様々な高齢者向け住宅の質の評価とサイトでその公開を進めることを考えています。その結果として、高齢者向け住宅全体の質が向上し、自然と健康になる高齢者向け住宅が展開するのではないかと考えています。