(2) 高齢者の健康増進の鍵一社会参加
- 148論文を扱ったメタアナリシスで、人とのつながりが最も長寿に影響するとの結果がでています。2番目が禁煙、3番目が禁酒、4番目が運動、5番目がダイエットでした。
- JAGES (日本老年学的評価研究) による2013年・2016年・2019年の287市区町村 (442,079人) の調査研究で、社会参加割合が高いほど,幸福感あり割合が高いとの分析結果となっています。さらにJAGES2013年回答者を約3年追跡したところ、参加する社会活動の種類が多いほど要介護リスク低い、働くことが介護予防に最も有効との分析結果となっています。
- 社会参加が健康に良い理由として、身体活動の増加、認知機能の刺激、精神的健康の向上、生きがいや役割の創出、社会的サポートの獲得が考えられます。
(3) Age-Friendly Housing
1) オウカスにおける要介護リスク調査
- JAGES2019年の調査データから、サ高住143名、地域在住高齢者398名を比較すると、週1回以上社会活動(運動、趣味、学習・教養、その他の活動)に参加している割合は、サ高住の居住者の方が有意に高いことが分かりました。
- 高齢者向け住宅が入居者の社会参加を促す4つの要素として、①入居者同士の交流に適した利用しやすい共有スペース、②社会活動の場所に近い・近接している、③入居者や近隣住民と交流しやすい柔軟な施設の規則・ルール、④入居者同士の思いやりが考えられます。
- 我々は、野村不動産グループ様のオウカス入居者136名とJAGESデータ580名 (オウカス入居者と背景類似した高齢者抽出) の2021年から2022年にかけての、要介護リスクの調査を行いました。
- 要介護リスクを評価する方法として、要支援・要介護リスク評価尺度 (筑波大学辻先生がJAGESデータをもとに2018年開発した指標) と基本チェックリスト (厚生労働省) の2つを用いています。要支援・要介護リスク評価尺度は。高齢者の手段的日常生活動作 (IADL)、運動機能、栄養状態、外出頻度などの10項目と性・年齢の計12項目からなる尺度です。尺度1点あたり6年間の累積介護給付費は1人あたり3.16万円高くなるとの調査結果があります。基本チェックリストは、日常生活関連動作、運動器、低栄養状態、口腔機能、閉じこもり、認知機能、抑うつ気分の7領域25項目の質問から構成されます。
- オウカス入居者は、地域一般高齢者に比べて、 要支援・要介護リスク評価尺度が約0.8点、基本チェックリストが0.3点有意に低下するとの結果になりました。