- ゼロ次予防とは、喫煙しにくい環境など、生活習慣などを規定する環境の整備を行うというものです。健康を維持するというのは、坂道を上るような大変なことです。ゼロ次予防というのは坂道を和らげることを目指すものです。
- こういった考え方が日本の健康施策にも反映しています。厚生労働省の「健康21日本」は日本の健康施策を示したガイドラインです。今年出された第三次では、「自然に健康になれる環境づくり」と「社会環境の質の向上」の大きな二つの方針が打ち出されました。「社会環境の質の向上」の計画目標として、①地域の人々とのつながりが強いと思う者の増加、②社会活動を行っている者の増加、③地域等で共食している者の増加、④メンタルヘルス対策に取り組む事業場の増加、⑤心のサポーター数の増加」をあげています。「自然に健康になれる環境づくり」の計画目標として、①「健康的で持続可能な食環境づくりのための戦略的イニシアチブ」の推進、②「居心地が良く歩きたくなる」まちなかづくりに取り組む市町村数の増加、③望まない受動喫煙の機会を有する者の減少をあげています。
- 国土交通省は、「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの創出による魅力的なまちづくりを推進しています。これは駅前の街路を拡充して、広場・公園・店舗・カフェなどを楽しく回遊できる空間をつくるというものです。実はこれは健康面でもとても重要なことで、楽しみながら自然と歩いてしまう環境づくりを国交省も重要と認識しています。アメリカでは、もともとは車社会ですが、ウォーカブルなまちづくりで高血圧・糖尿病・心筋梗塞のリスクが低下できるという研究が盛んに行われ、エビデンスが蓄積されています。
- 日本ではイオンモール株式会社様が「イオン内を歩きましょう」という取り組みを行っております。イオンショッピングモールはとても広くて、冷房も聞いていて、自然と楽しんで歩くいい環境が整えられています。千葉大学予防医学センターの、我々とは別の研究室ですが、イオンモール株式会社様との共同研究によるビックデータ分析で、スマートフォンのアプリケーションを活用したウォーキングプログラムへの参加が歩数増加に関連し、特に都市部・郊外・大型モール・女性・高齢者で歩数が多く増加する可能性が示されました。