柏プロジェクト
 −住宅メーカーに期待するこれからの高齢期の住まい

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【質疑応答・意見交換】

Q:
地域に認知症の方が増えると、地域内での事故が懸念されます。事故を防ぐためには、認知症に関する、自治会や商店街など地域の方々による適切な知識と対応が必要ではないでしょうか。
A:
認知症になられた方を閉じ込めるのではなく、地域で理解し、受け止めるという方向で、国の政策も動いています。先進的な地域では認知症サポーターの養成が進められています。フレイル予防とは閉じこもらないことであり、まちづくりにおいて認知症対応の環境を整える政策が無ければ、地域で認知症高齢者を受け止めることは難しいと思います。柏市では日常生活圏域で地域支えあい会議というネットワークをつくり、認知症についての勉強も行おうとしています。自治会や地区社協も参加しています。支えあい会議のような組織が普遍的なモデルになるよう、国の政策も動いています。

Q:
我々ハウスメーカーは、医師会との付き合いはあまりありませんが、医師会にこちらから提言する糸口はどのようなものになるでしょうか。
A:
それは結論からいうと、一義的には市町村の政策責任だと思います。柏市では、市役所が一所懸命に取り組んで、医師会と手を取り合って在宅医療・介護の連携が動き始めるという、モデルができました。法律において在宅医療・介護連携推進事業は市町村の責任となっており、市町村の研修プログラムの作成が進んでいます。住宅事業者が、在宅医療の必要な入居者と医師をつなげるために、市町村の仲介で医師会に相談に来ましたということは、今後は制度上の正当性があることで、今後の医師会と事業者の関係は、そうした相談ができるものになると思います。そのノウハウを事業者として蓄積して欲しいと思います。

Q:
地域のコンシェルジェの担い手は、どのような方々がイメージされているのでしょうか。
A:
地域のコンシェルジェの事業を、丸ごと税金等の公費で行うことは難しいと思います。介護保険事業でコンシェルジェ養成はできるかもしれません。地区社協だけでコンシェルジュを行うことは無理でしょう。コンシェルジェを誰がどこに置くかは、これからの我が国の高齢者政策の最大のポイントの1つです。サ高住には見守り・相談のスタッフがいるので、サ高住のスタッフが地域住民からの相談を無料で受けて、それがサ高住入居促進につながるというビジネスモデルや、多摩ニュータウンのヤマト運輸グループのようなモデル、生協や郵便局がコンシェルジェを行うといったモデルがあるかもしれません。様々なビジネスでの担い手と、市町村の低所得者向け対応施策などをネットワーク化していくことになるでしょう。地域ごとに新しいシステムにチャレンジしていくことが必要です。コンシェルジェの担い手やビジネスモデルについて、事業者の皆様がお持ちの情報があれば、教えていただきたいと思います。

Q:
当社でも、小規模多機能と24時対応の介護事業を行っていますが、収益性の低いことが、なかなか普及しない理由だと思います。これからのビジネスモデルとして、普及を図る上で何が必要でしょうか。
A:
2030年に危機的状況が来ようとしており、その前に在宅医療・地域包括ケアシステムが普及・定着されるよう、厚労省も必死に取り組んでいます。このサービスは賃金を上げるといった思い切ったことが必要になるでしょう。危機的状況を乗り切ることができるかは、財源の一層の投入も必要ですが、まずは、今日私がお話したような、今までの介護保険制度を集大成した在宅医療・地域包括ケアシステムのモデルが構築できるかにかかっていると思います。


以上