柏プロジェクト
−住宅メーカーに期待するこれからの高齢期の住まい
地域包括ケアシステムとは、高齢者が自分の社会的生活を取り戻すことができるためのシステムですが、30分でかけつけられる圏域に住まいがあり、医療と介護や、見守り、相談、食事、困りごと対応といった生活支援のあることが必要です。介護が必要になる前の高齢者にも生活支援が必要で、生活支援がつけられた住宅がサ高住です。生活支援をどう考えるかが大きなポイントですが、さらに外に出やすい、閉じこもりにくい地域社会をつくることが必要です。
(3) 医療政策が問い直されている
閉じこもりにくい地域社会をつくる上での大きなネックは、在宅医療の欠落した、これまでの医療です。
現在の医療技術は素晴らしく発達しており、脳卒中で倒れられた方が、救急車で病院へ行き、手術を受け、リハビリで杖による歩行ができるまでに回復されて、自宅に戻ることが実現されるようになっています。しかし80歳代の方が肺炎になって、救急車で病院に行かれますと、多くの人が病院に寝かせきりになり、やがて認知症が発症するようになります。入所施設や療養型病床を探そうにも、大都市圏では施設や療養型病床が不足しています。
問題は、病院が悪いというより、救急車で病院に行くしか手段がないということです。在宅医療があれば肺炎など自宅で管理できると医師の方々は言っておられます。足が痛いと病院に行ったら、入院となり、そのまま自宅に帰ることができなくなり、有料老人ホームに移った方がおられますが、在宅医療があれば自宅で治療ができたと考えております。在宅医療があれば、自宅で看取りまでできます。
現在日本人の3割はがんで亡くなっていますが、病院に行くと、ノーリターンと分かっていても、病室で苦しいがん治療に向き合うしか選択肢はありません。同じ病状でも、在宅医療で痛みの管理を行うことができれば、自宅でペットと過ごしたり、好きな音楽を聴いたり、アルコールを飲んだりしながら過ごせます。訪問看護で有名な秋山正子氏も、末期がんで余命1ケ月とされた方も、自宅に戻ると普通の生活者の表情に戻ることができることができると言っておられます。
「治す医療」から、在宅で「治し、支える医療」への大転換がなんとしても必要です。国は明確に、在宅医療の医療システムへの方向に動き始めていますが、後期高齢者が急増する前の2025年に在宅医療のシステムが整備されているかが“勝負どころ”と考えています。市町村と医師会が動けば、在宅医療の普及がかなり進むということを、皆様の頭に入れていただきたいと思います。
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