柏プロジェクト
−住宅メーカーに期待するこれからの高齢期の住まい
(2) 今後の医療介護政策の方向−地域包括ケアというまちづくりがベースに
生活習慣病予防はメタボ対策として進んでいますが、これからの大きなポイントは、フレイル (介護) 予防です。筋肉が徐々に減少していく症候群をサルコペニアといいますが、現在の介護予防事業は、筋肉の減少が進んでいる高齢者を対象に、さらなる虚弱化を食い止めようとするものとなっています。しかし、筋肉減少が進んでから、もとの身体に戻そうとするだけでは遅く、もっと早い段階の、筋肉減少が始まった段階で、減少をなるべく遅らせていくフレイル予防が最前線の課題となっています。
フレイル予防のためにやらなければならないことの1つは「食」に関することです。たんぱく質を中心に食べるということと、歯を守り、噛む、呑み込むという口腔機能を維持するということですが、口腔機能維持について日本はまだ弱く、徹底的にやっていくことが必要です。もう1つは「身体活動」で、運動しなければ筋肉はつきにくくなり、さらに運動しにくくなるという悪循環に陥ります。そして最後が「社会参加」ですが、「食べましょう」「運動しましょう」だけでは実行は難しいかも知れません。しかしIOGの飯島准教授が柏市で行った研究で、自立を維持している高齢者は社会との接点を持っているということがわかってきました。フレイルが始まる入口は、人とのつながりが減り、自分の生活の広がりが減ることであることが明確なデータで示されています。閉じこもらない住まい方を実践しなければ、フレイルにつながっていきます。
IOGの調査研究で、フレイルのチェック方法としては、両手の親指と人差し指で輪をつくり、ふくらはぎ一番太いところを囲んだ時に、隙間ができる人はサルコペニアになっている確率が高いというデータが出ています。筋肉減少をチェックする上でふくらはぎをメルクマールとすることは国際標準になっていますが、日本ではデータがありませんでした。
柏市ではIOGが介護予防事業の一環として、「サロンにおける健康増進の機運づくり」を進めています。介護予防の課題は、高齢者がなかなか来てくれないことですが、栄養 (食/口腔)・運動・社会参加の三位一体で総合的に健康をチェックし、自分の健康に関心をもってもらう、「気づき」の活動を行っています。この「サロンにおける健康増進の機運づくり」を日本中に普及する政策を厚労省に提案する準備を、我々は進めています。
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