講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


3. 園田邸の継承を実現する
鈴木:  少し前のことですが、この建物を借りてゼミのOB会に利用したことがあります。園田夫人から別の方へと継承できたんですよね。
野沢:  価格のことなどから土地ごとこの住宅を継承するのは無理だろうと感じるようになった頃、「昭和の名作住宅に暮らす」という小さな展覧会を開きました。旧園田邸だけでなく、吉田五十八の旧倉田邸、前川國男の新・自邸の資料を展示しました。この展覧会を日本経済新聞が文化欄に取り上げてくれたのです。その結果、関心を持つ方が全国に広がり、各地から来てくれるようになったのです。そのお一人が旧園田邸の現在の所有者になって下さったということです。
木下:  その方は吉村建築のファンで、ご自宅は軽井沢山荘を参考にされたそうです。「ぜひ吉村順三が設計した家を見てみたい」とわざわざ大阪からお越しくださいました。実物を見てぜひ継承したいとおっしゃっていただき、園田高弘さんが使っていたピアノをはじめ、園田邸にゆかりの品々とともに継承されました。継承後も住宅遺産トラストが建物管理を担当し、コンサートや見学会などの活動も継続させていただいています。
野沢:  現在、所有者の方は木下さんや吉見さんを信頼してくれています。今日もここでMusic Dialogue というイベントの練習が行われていますが、こうした活動や建物見学会も許してくれています。
木下:  住宅遺産トラストが日常清掃や近隣対応、建物の活用を行い、建物利用や見学によって得た収入の一部は建物の維持管理のために使われています。




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